多様化時代だから、お手本がたくさん欲しい

 一方で、「ロールモデルの不在」という現象もありました。アンケートでは、ロールモデルが「いない」と答えたのが46.7%という結果になりました。ただ、これは誰もが憧れる人がいない、という意味ではないようです。アンケートの自由回答や創刊インタビューでの発言から、三つの特徴が見られました。

 まず一つは、「家族」「友人」「先輩」。「ロールモデル」といった問い方をすると「いない」という回答になるのですが、「どんな人を尊敬しているか」と聞き方を変えると、母や祖母、姉、自分よりも少し年上の友人や先輩といった身近な存在を挙げていました。勉強したり副業で成功したりしていて自分よりも少し先を行っているような存在に憧れるようです。そして人間力や人柄のよさについて指摘する声も。あるいは反面教師にしている人もいました。

 二つ目は、SNSで活躍する「インフルエンサー」です。少し憧れの存在だったり等身大の存在だったり、さまざまなインフルエンサーをフォローし、日常の学びや糧にしているようです。皆さんの中でも日常的にインフルエンサーをチェックしている方は多いのではないでしょうか。

 三つ目は、「一人のロールモデルには絞れない」という意見です。生き方が多様化する時代を色濃く反映した結果でしょう。さまざまな成功例・失敗例・体験談から、自分の合うところをまねたり参考にしたりするという「いいとこ取り」を指向している人が増えており、たくさんの事例を読みたいという声が集まりました。日経doorsはこうした声に積極的に応じていきます。

キャリア構築や両立不安で悩む もっと自由な働き方を

 自由回答で個別に悩みを聞いてみました。本当にたくさんの悩み事が集まりましたが、特にここで注目したいのが(1)これからの働き方、(2)出産・育児との両立、の二つ。

 これからの働き方については、正社員で働き続けるか複業を目指すか、フリーランスになるかといった働くスタイルについて模索する回答が目立ちました。働き方の正解はなく、人の数だけ働くスタイルがあると日経doorsは考えます。

 また、転職や昇進、ステップアップのタイミングやキャリア設計について知りたいという声も多くありました。さらに、自己研鑽(けんさん)のための投資額も気になっているようです。思いの他、勉強にお金がかかるため足踏みしているケースも。

 育児と仕事の両立については、不安視する声が圧倒的でした。ざっと分類すると、周囲に事例がなく全く想像がつかない、先輩ワーキングマザーの奔走ぶりを見て自分は無理だと思ってしまう、時短勤務によってキャリアアップに影響が出そう、というのが主なものでした。

 子どもを産みたいという気持ちがある人が、両立不安のために仕事を諦める、あるいは出産を諦めるという状況はもったいない。前例がないからといって、自分が求める働き方を諦めざるを得ない状況があるのも残念なことです。

 両立を支援する制度やサービスをどう利用するかがカギですし、育児に専念した後に復職するという選択肢だってあります。それを見据えて、今、何をしておくべきなのか。キャリアと出産に関する不安を払拭するための情報発信も日経doorsは担っていきます。

女性のライフイベントに寄り添ったキャリア提案を

 恋愛・結婚に関する悩みも集まりました。キャリアにまい進すると恋愛できない、仕事中心なのでいつ結婚できるのやら、などというものです。恋愛とキャリア、確かに「仕事脳」に侵されると恋愛モードになりにくいかもしれませんが、仕事も恋愛も、両方取りたいですよね。

 結婚だってそう。仕事が恋愛や結婚を遠ざけてしまうのは適切ではないと思いませんか。パートナーの理解さえあれば、仕事中心の人生だって可能です。遠距離婚や週末婚も当たり前。法的な結婚のスタイルが絶対ではありません。

 アンケートでは結婚や出産のために仕事を辞めようと考えている人は少数派でした。働き方が多様化する時代ですから、ライフイベントごとにワーク・ライフ・バランスを見直すことは可能です。働くペースを緩めて育児に専念する、場合によっては一呼吸置き、育児が落ち着いたらまた仕事に戻るという選択肢だってあるのです。ただそのためには、自分の価値を高めておくことが重要です。

 「女性のキャリアは短期決戦なんですよ。だから今、必死です」――ある20代女性がインタビューで話してくれました。今、経験を積み、自分の価値を最大化することに命を懸けている。それは、どんな方向に人生が進んでもいろいろな選択肢を出して主体的に選べるようにするため。ゆっくりの歩みで手遅れにならないよう、猛ダッシュでまい進しているというのです。

 仕事で笑顔になりたい。すてきな仲間や好きな人と一緒に人生を楽しみたい。好きなことをして幸せに生きていきたい。簡単に言うと、「私が欲しいものぜーんぶ欲しいし、私が実現させたいものぜーんぶ実現させたい!」

 日経doorsは、「ぜーんぶ!」と思う皆さんが、自分で選んだ扉を自分で開けて進んでいけるよう、全力で応援します。一緒に歩んでいきましょう!


文/鈴木陽子(日経doors編集長)
調査/日経BPコンサルティング「働き方&ハッピー度調査」全2000件(2018年12月19日~2019年1月17日、インターネット上で調査)