今ある女性誌やWEBメディアを「ディスる」

こやま 本当の自分を今の自分が追いかけるという設定は、太田監督の発案です。私が思っていたイメージを膨らませていただいて、何十倍もいい映像に仕上げてもらいました。化学反応みたいな面白さがあって、「あ、こんなの作れちゃうんだ」ってゾクゾクしましたね。

 実はアーヤの前には、太田監督は全然違うタイプの子を主人公としてイメージしていました。美術系大学卒で、ファッションも個性的。さらに、あだ名が「ピッカソ」。そのくらい飛んだ印象の女性だったんです。

 でも編集部に提案したら「普通の会社員っぽい人のほうが、思いを爆発させた時とのギャップが面白いのでは?」という意見をもらって修正しました。

―― 映像では、「毎日をカワイイでいっぱいに」「女子からも男子からも愛されよう」など、女性誌の表紙に踊る文言をアーヤがつまらなそうなメロディに乗せて口ずさんだ後、「私の『自分磨き』って、本当にそんなものなの?」と自問します。

こやま そう、結構、既存の雑誌やWEBメディアを「ディスってる」んですよ(笑)。編集部には事前に「こういうアンチテーゼを打ち出しちゃっていいですか……?」って恐る恐る聞いたところ、「全然、問題ないですよ」と快諾してもらいました。

太田 でも、実際の雑誌を撮影するわけにはいかないので、全部それっぽく作ったものなんですよ。表紙だけを作って、雑誌に貼り付けました。

こやま 表紙がムービーに映るのは一瞬だから、つい見過ごしちゃうんですけど、細かく見ると、タイトルがどれも本物と見まごう完成度なんです。「みんなかなえたいカワイイ自分」とか「誰もが羨むワタシに」とか。全部、監督が考えたんですよね。

私の『自分磨き』って、本当にそんなものなの? ――既存メディアのアンチテーゼなんです
私の『自分磨き』って、本当にそんなものなの? ――既存メディアのアンチテーゼなんです

 この続きは、2月26日の公開です。どうぞお楽しみに!

取材・文/大矢幸世 写真/稲垣純也 撮影協力/la billage