日経doorsの媒体発表とともに公開されたブランドムービーでは、20代の主人公が、もう一人の自分と出会うところから物語が展開します。「女子力」「かわいさ」といった、世の中にあふれる女性像に対して疑問を抱き、本当の私を追い求める――。そんなひたむきな彼女の姿が印象的なこの映像には、どんな思いが込められているのか。制作に携わったコピーライターのこやま淳子さんと映像監督の太田良さんに、制作秘話も併せて聞きました。

こやま淳子(こやまじゅんこ)/太田良(おおたりょう)
コピーライター/映像監督
こやま淳子/太田良 右:太田良さん
1987年東京都生まれ。2013年よりAOI Pro.企画演出部に所属し、テレビCMをはじめ、ミュージックビデオやショートフィルムなどの演出をしている。主な仕事に、三菱電機 霧ヶ峰50周年ムービー「私の人生に吹く風」など。

左:こやま淳子さん
1970年京都府生まれ。コピーライター・クリエイティブディレクター。早稲田大学卒業後コピーライターへ。博報堂などを経て2010年に独立。企業や商品のブランディングの他、コピーライター養成講座講師、広告賞審査員、書籍執筆なども手がける。最近の仕事は、プラン・ジャパン「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」など。

「女子力」の呪縛から解き放つ

―― 昨年来、公開されている日経doorsのブランドムービーが、20代の女性を中心にジワジワとSNSで拡散しています。Twitterのコメントを見ると「鳥肌が立った」「私は私でいいんだって思えた」「自分を見てるようで泣く」「人生にはガムシャラ期も絶対に必要」といった文言が並び、繰り返し見ている人も多いようです。コピーライターのこやまさんは、どんな思いでdoors世代へ向けたメッセージを考えたのですか。

こやま淳子さん(以下、こやま) これまでの仕事で20~30代の働く女性向けの広告はよく書いてきました。世の中にあふれているテーマなので、初めは「あ、できそうだな」と軽く考えるふしもありました。それで最初は、ちょっと自信のない柔らかいイメージの女の子が「いろいろなものになりたい」と矛盾した夢を語り、人生にはたくさんのドアがあるよねと結論づける、みたいなアイデアを提案したんです。

 でも、その後日経xwomanの羽生祥子総編集長や、『日経doors』の鈴木陽子編集長とお会いした時、「もっと無鉄砲で、ポジティブなエネルギーを描いてほしい」と強く言われました。若い女性たちは「女子力」とか「かわいくなくちゃいけない」といった言葉にがんじがらめに縛られて、本当はもっと頑張りたいのに頑張れずにいる、というんですね。

 その話を聞いて、率直に面白いなと思ったんです。それで白紙の状態でゼロからメッセージを書き直しました。

「女子力」とか「かわいくなくちゃいけない」といった言葉に縛らた女性を解放したいというメッセージが込められているんです
「女子力」とか「かわいくなくちゃいけない」といった言葉に縛らた女性を解放したいというメッセージが込められているんです

―― ムービーでは、20代の女性が、もう一人の自分と向き合う姿が描かれています。映像監督の太田良さんは31歳。日経doorsの想定読者と同世代ですが、モデルは身近にいたのでしょうか。

太田良さん(以下、太田) 彼女の名前は「アーヤ」というんですけど、当初は自分と同じ年くらいの女性をイメージしていました。でも、こやまさんからいただいたメッセージには、その人の心の内面が描かれています。普段生活していて、自分の内面をワーッてさらけ出せる人っていませんよね。そういう意味では、アーヤはフィクションというかファンタジーというか、空想上の人物になっています。