マイナス印象をプラスに転じる秘策とは?

 「自分が見られたいイメージとかけ離れている」としても大丈夫。マイナスの印象をプラスに転じさせる方法があります。

 心理学には「クレショフ効果」「ゲインロス効果」という認知バイアスの言葉がありますが、これらを上手に取り入れましょう。「クレショフ効果」とは、前後の脈絡がない写真や映像を見ても、人は前後のつながりを無意識に関連付けてしまうことをいいます。例えば子猫の写真の後にミルクの写真を見たら、「子猫がおなかをすかせている」と思ってしまいますよね。

 「ゲインロス効果」は上書き効果とも呼ばれ、最初にマイナスの印象を与えたとしても、その後にプラスの影響を与えたほうがより好印象となるという働きです。

・クレショフ効果……笑顔の写真入り名刺を作り、「良い人そう」というイメージを持ってもらう/怖い人だと思われがちなら、かわいいキャラクターものの文房具を使ってみる

・ゲインロス効果……初回に人見知りをしてうまく話せなかったとしても、次に会ったときには笑顔を心掛ける/黙っているだけなのに不機嫌そうだと思われるなら、気さくに話し掛けてみる

 一方で対人関係には「初頭効果」という初対面の印象が強く焼き付いてしまう心理効果があります。初対面で悪い印象を与えてしまうと、それがなかなか消えず、挽回するには7~8回(!)会わなくてはいけないとされます。

 「もし第一印象で失敗してしまったらゲインロス効果を狙い、2回目は『この前のことは思い違いかな』と相手に思わせるぐらいの気遣いを心掛けましょう。大切なのは常に自分の印象をアップデート&バージョンアップすることです」

自分がどんな印象を相手に与えているかを分析し、自分の印象をアップデートしていくことが大切です (写真はイメージ)
自分がどんな印象を相手に与えているかを分析し、自分の印象をアップデートしていくことが大切です (写真はイメージ)

好感度を上げるための年代別ポイントとは?

 同じ社内で働いていても、好感度を上げるポイントは年代によって違います。順番に見ていきましょう。

【新入社員】
 いわば「知らないことがあっても当たり前」の状態なので、「素直さがあるか」がポイント。まずは、

・挨拶
・指摘されたときにきちんと受け入れて改善する
・分からないことがあったら聞く

 この3つを意識しましょう。

 「社内では『表情に気を付ける』ことも大事です。例えばミスを指摘されたときにイヤな顔をしない、雑用を頼まれたときにムスッとしない、など。コピー一つ取るにしても、両面コピーにしたほうが見やすいのか、今日はどんな会議があるのかを考えながらコピーを取ると、仕事に対するやらされ感がなくなり、能動的に働けるようになります。そうやって小さな成功体験を積み重ねていくと、いずれ大きな仕事を任されるようになりますよ」(余語さん)

【社会人2~5年目】
 新人時代は許されたことも許されなくなってくるのが、この年代。「ランクアップ」を念頭に置いて行動することが必要です。意識すべきは、

・「去年に比べて自分はどうなりたいか」をイメージする
・「去年より○○のスキルを磨く」などテーマを決める

 この二つです。

 「特に3年目ぐらいになると、『仕事は速いけれど小さなミスが多い』『最後の詰めが甘い』など、いつも注意されるポイントが分かってくると思います。その言葉を真摯に受け止めて、改善していく姿勢が大事です。反対に自分の得意分野や良さも分かってくるので、そちらは大いに伸ばして。組織の中での自分の立ち位置、どう貢献できるかを考えて行動しましょう」(余語さん)

【社会人10年目】
 仕事で部下を持ち、「部下のマネジメント」という難題に直面するのが、この年代。常に、

・自らを客観視し、相手を深く知る
・相手を力ずくで支配しようとしない

 この二つを心掛けましょう。

 「まずは自らを見渡し、部下からどう思われているかを知りましょう。『怖くて近寄り難い』と思われているなら、柔らかな色合いの洋服を着る、口角を上げて表情を優しくするなどの対策を。また、後輩を頭ごなしに否定してしまうと関係性に亀裂が生じます。例えば、派手なネイルをしている部下に注意をするとしても、『ダメでしょ』と一方的に注意するよりも、『休みの日ならすごくステキだけど、その手でお客様と名刺交換をしたらびっくりされるんじゃない?』と諭してみて。伝え方や表現を少し工夫するだけで、相手に与える印象がガラリと変わりますよ」

 自分と周囲に好印象の連鎖が続けば、今よりももっと働くことが楽しくなりそうです。

取材・文/三浦香代子 イラスト/itabamoe 構成/浜田寛子(日経doors編集部)