昨年から、パラレルキャリアを実践する女性たちを取材してきた。平日は化学メーカーで営業事務に携わり、週末はカメラマンの仕事をする人。大手企業の社員であり、ベンチャー企業の社長も務める人。国家公務員として働きながら、農林水産業に関する勉強会を開く人。彼女たちは、「副業」をしているという意識はあまりなく、「どちらも自分にとって大切な本業だ」と言い切る点が興味深かった。何よりも、皆、キラキラと輝いていた。
「好きを仕事に」――。そんな言葉を耳にする機会が、一気に増えた。SNSやプラットフォームの発達により、個人間でも得意なことや「スキル」を売買できるようになった。誰もが、社会に対して、何かしらの形で貢献しやすくなっている、とも言えるだろう。
2018年は、「副業元年」ともいわれた。政府も、副業「禁止」から「解禁」へとかじを切ったのだ。その背景にはさまざまな要因があるが、そのうちの一つとして「『会社』と『個人』の関係性に変化が起きた」と、「複業の教科書」の著者、西村創一朗さんは話す。「これまでは、会社が上となって個人を管理していたが、そのモデルが変わる。会社と個人が対等にリソースを提供し合う関係になる」と、西村さんは語る。
また、西村さんは、パラレルキャリアの最大のメリットは「自分の人生を取り戻せること」だと断言する。誰もが、自分の意思で好きなことや誰かの役に立つことをして、収入を得る。つまり、今後は何となく時間を「消費」するのではなく、「投資運用」しましょう、というわけだ。
そして、いわゆる「副業」ではなく、どちらの仕事も「本業」と言えるような「複業」こそ、自己成長には大切だ、と西村さんは語る。
この連載では、全6回にわたり、複業の始め方や、メリット・デメリット、注意点などを毎月第2週にお伝えする。さらに、パラレルキャリアを実践する女性たちの実例も紹介する予定だ。もちろん、すべての人が複業に向いているとは限らない。でも、複業に関心を持った人に、ヒントやコツをお届けしたい。
毎日通勤電車に揺られ、何となく似たような毎日を過ごし、漠然と将来に不安を抱えている、あなた。今年は、新しいことにチャレンジしてみてはどうだろうか? 「転職」でも「独立」でもない「複業」という形で、新しい自分に生まれ変わろう。自分の人生を取り戻せるのは、自分自身の意識と行動のみ。この連載を通じて、変わろうとするあなたの背中を、少しでも押せたらと願っている。
文/浜田寛子(日経doors編集部)