「パラレルキャリア」という新しい働き方が、少しずつ広まってきました。ご自身も「複業」を実践している西村創一朗さんに、その秘訣を聞く当連載。第1回は、「今、なぜ複業が必要なのか」についてです。西村さんは、「個人と企業の間の『御恩と奉公』の関係は終わった」と話します。その背景には何が……? 詳しく見てみましょう!

 今、なぜ「複業」なのか? そして、なぜ複業は早く始めるべきなのか?

 まずは、僕が皆さんに複業を勧める背景からお話ししたいと思います。

 ここで早速「あれ?」と思われた方も多いかもしれません。パラレルにキャリアを積んでいく働き方を推奨している「複業研究家」の僕は、一般的に使われることが多い「副」業ではなく「複」業という字を使っています。この違いには大きな意味があり、複業とは「複線でキャリアを展開し、自分の市場価値を高めていく」ための選択肢。単に副収入稼ぎを目的とした、「時間切り売り型」の方法とは一線を画すワークスタイルとして推奨しています

 本業ではなかなかすぐには実現できない「好きなこと」「やりたいこと」に、自分で決めたタイミングでトライでき、成長機会を増やしていけるのが複業の良さ。複数の仕事を持つという意味では副業も複業も変わりませんが、それに打ち込む本人の目的意識は全く違うものなのです。

本業ではなかなか実現できない「好きなこと」「やりたいこと」があるなら、まずは「複業」で始めてみては?

 そして、これからの時代のキャリア設計には、この「複業」をいかにうまく組み込んでいくかが重要なポイントになっていきます。

 その背景には個人から見た側面と企業から見た側面の二つがありますが、個人の観点では大きく分けて二つ。一つは、ここ数年で「仕事の意味づけ」が変化してきたという点です。

仕事は「自己実現の手段」

 かつて仕事は「お金を稼ぐためのもの」と捉える人が多く、そのためにつらい仕事も我慢する「滅私奉公的な働き方」をする人が少なくありませんでした。ところが、最近では「自己実現の手段」として仕事に価値を置く人が増えています。象徴的なのは、YouTubeのCMコピーに使われた「好きを仕事に」という言葉でしょう。自分が好きなこと、得意なことを通じて誰かの役に立ち、その結果として収入を得たいという価値観は若い世代を中心に広がっています。しかしながら、誰もが本業で「好きを仕事に」を実現できるかといえば、そうではありません。自己実現型のキャリアの可能性を広げる選択肢として、複業は有効に働くのです。

 もう一つの背景にあるのは、やはり個人の「経済的事情」です。これから本格的な少子高齢化時代に突入する日本においては、消費税増税や社会保険料の負担など、個人の「出費」が増えるニュースばかりが目立ちます。ならばその出費を補うだけの収入増が見込めるのかといえば、「給料が右肩上がり」というのははるか昔のこと。「このままいけば、カツカツになっちゃう?!」と誰もが不安になっているのが、21世紀のニッポンの実態です。となると当然、本業以外の収入源を求めることになるのです。