専門家が分析 「当然、社内恋愛は確率として高い」
五百田さんは、「心理学的観点からも、当然、社内で誰かに恋をする確率は高い」と話します。「心理学では、『人は目に入る回数が増えれば増えるほど、その相手を好きになる』とされています。一般的には、『単純接触効果』とも呼ばれます。職場で誰かに恋をする場合、一緒にプロジェクトを進めたり、同じ部署で働いていたりすると、ある意味『つり橋効果』のような形で感情が左右されやすくなる。一緒に苦労をして、一緒に成功体験を味わった相手であれば、なおさら好きになる確率は高まるでしょう」
確かに、会う回数が多い人や、目にする機会が多いモノに対して「好感度が高まる」ことって、ありますよね。その他の心理学的メリットも聞いてみました。
「同じ会社で働いているということは、ある程度学歴が同じで、生まれ育った環境も似ている人が集まることが多い。相手が何の仕事をしているか深掘りせずとも把握できる上、交際をする前からお互いの年収も分かります。『自分の親が納得するような相手』を結婚相手に選ぶ女性は少なくありません。社内の男性であれば、あらかじめ相手のプロフィールも分かりますし、『周囲も認めてくれるだろう』と考え、社内恋愛の末、結婚する人も多いでしょう」
「一方、『社会人の恋愛』を考察する場合、女性は、男性よりも数段難しいゲームをしている」と五百田さん。その理由とは……?
女性は「キャリア×恋愛」という複雑なゲームをしている
「まず、社会人の恋愛、特に、キャリア意識の高い女性の恋愛は非常に難しい問題と考えます。その理由は、『ライフステージとキャリアの問題』が複雑だから。
例えば、○歳で結婚して、○歳で出産をして、産休育休が終わったら××の部署に行きたい。そのためには△△さんに事前に交渉をして……と、『ライフ』と『キャリア』のプランニングを緻密にしている女性は多いでしょう。男性と比較すると、ライフとキャリアの計画がとても細かく、より深刻なのです。
ですが、もしも、結婚を前提に交際していた彼氏にフラれてしまったら――。緻密に描いたプランは振り出しに戻り、出産適齢期という年齢としてのタイムリミットも切実。だからこそ、失恋したときのダメージは女性のほうが大きいのではないでしょうか。『恋愛の状況』が『ライフステージの状況』と密接に結びついているわけです。
そうした意味では、キャリア意識の高い女性は、恋愛自体を少し面倒に感じたり、『他にやることがたくさんあるから』と拒否反応を起こしてしまったり、恋愛から距離を置いてしまう人も少なくないかもしれません」
「ただ、女性の場合、よくも悪くも恋愛の状況(感情)が仕事へのパフォーマンスに影響しやすいのも事実。失恋をしたときは仕事が全く手につかなくなってしまったり、反対に、恋愛がうまくいっていると仕事も順調に進んだり。女性のほうが、感情が仕事へのモチベーションに大きく影響を与えていると言えるでしょう」
キャリア意識の高い女性の恋愛は、難しい――。五百田さんが指摘する通り、「ライフ」と「キャリア」との両方を真剣に考える必要があるので、恋愛自体におっくうになってしまいそう……。では、どうすればいいのでしょうか?
「とは言え、本来、誰かに恋をするのはとても良いことだと私は信じています。『ライフとキャリアのプランが……』と、ガチガチになって構えたり、頭でっかちになったりするのではなく、誰かを好きになったら純粋に恋愛を楽しめばいいのではないかと思います」
今、好きな人がいないあなたにも、とっておきの方法があるといいます。「それは、『自分で自分をキラキラさせること』。仕事に打ち込むことでも良いですし、趣味を頑張るのも手。例えば、仕事に一生懸命に取り組んでいて上司から褒められると、そのうれしさが表情に表れますよね。そうすると、自己肯定感が高まり、キラキラしているように見えて、男性からもモテるんですよね。なので、自分を『プロデュース』する感覚で、そうした努力を心がけると良いのではないでしょうか」
確かに、将来を見据えた「社会人の恋愛」は難しい。でも、五百田さんが述べたように、恋愛を楽しむ方法は、きっとあるはず。今、彼氏がいる人もいない人も、「自分をキラキラさせる」ことを意識すると、毎日が変わってくるかもしれません。
次回は、「社内恋愛中」のdoors女性たちをご紹介します。「二人の出会いは?」「同棲はどうやって始めたの?」「どんなことでけんかする?」など、気になる実態を直撃! 楽しみにしていてくださいね。
取材・文/浜田寛子(日経doors編集部) イメージ写真/鈴木愛子、吉澤咲子