同居を始めた頃はケンカも… どう仲直りする?

 しかし、同居を始めたばかりの頃は、ケンカも多かった。それまではお互いの生活スタイルを知らなかったが、「一緒に住み始めると相手に対する不満」を感じることも。「ユリが他の男性社員と仲良くしていたり、飲み会の帰りが遅かったりすると、自分が嫉妬してケンカになります。大きなケンカをした時は、だいたい俺が自分の荷物をまとめ始めます(笑)」(悠介さん)

 ケンカをした時は、お互いが相手に対して言いたいことをすべて話し、建設的な議論をする。「荷物はまとめるんだけど、『別れるとなるとやっぱり寂しいね……』となり、いつも仲直りします(笑)」(ユリさん)

社内恋愛だからこそ、相手への配慮ができる

 お互いに同じ勤務先だからこそ、仕事とプライベートとの両方において、メリットがある。

 「互いの人脈や情報をシェアしやすい、というメリットはありますね。もちろん、部署内の機密情報は守りますが。以前、彼が営業先のお客さんから、ある製品について『機能の説明を詳しくしてほしい』と頼まれたことがあったんです。でも、彼の部署ではその製品の知識が豊富な人がいなかった。その話を彼から聞いた時に、『私の部署の△△さんなら、その製品に詳しいよ』と、彼に話したんです。そのおかげで、お客さんも喜んでいましたし、彼も事なきを得ました」(ユリさん)

社内恋愛だからこそ、お互いの人脈や持っている情報をシェアできる、というメリットも
社内恋愛だからこそ、お互いの人脈や持っている情報をシェアできる、というメリットも

 お互いに仕事への理解があるからこそ、悩みを相談できたり、事情を把握し合えたりするメリットも。「何も言わなくても理解し合い、相手への配慮ができるのは、やはり社内恋愛だからこそだと実感しますし、お互いに負担も少ないですね」(悠介さん)

「勤務先は社内恋愛が多い」 その理由は?

 ユリさんと悠介さんの勤務先は、会社全体としても社内恋愛のカップルが多いという。その理由は、「仕事が忙しいから社外での出会いをつくりにくいこと。一緒にいる時間が長いからこそ、心理的距離が近くなること。相手の仕事のスタイルを理解しやすく、交際が長続きしやすいこと」だとユリさんは予想する。

 「企業のビジョンが、自分自身の考え方や価値観に似てくる人も中にはいる。そうなると、社外の人と話が合わなくなり、付き合っていた彼と別れてしまったという話も聞きます」(ユリさん)

 一方、同期や先輩、上司から、からかいのネタにされ、社内恋愛だからこその難しさを感じることも……。「周囲にからかわれることは、やっぱりある。笑い話ならいいけど、変に二人の関係を詮索される時は、正直嫌だな、と感じます」(悠介さん)

励まし合える、お互いの両親とも仲がいい―が理想

 お互いの仕事を理解し、ライフスタイルを尊重し合うユリさんと悠介さん。今後の「二人の理想の関係」を聞くと、幸せをかみしめるように答えてくれた。

「この先、何があっても、肩を組んで『頑張ろう!』と互いを励ましていけるパートナーでいたいです」(ユリさん)

「お互いの両親とも仲が良い『家族のような関係』が理想ですね」(悠介さん)

「お互いを励まし合えるパートナーでいたい」(ユリさん) 「家族のような関係が理想です」(悠介さん)
「お互いを励まし合えるパートナーでいたい」(ユリさん) 「家族のような関係が理想です」(悠介さん)

 経済産業省によると、日本には約380万の企業が存在するという。そんな数ある会社の中で、勤務先が同じだったからこそ出会えた二人。その上、幸せな交際が続いているのは、偶然という名の必然であり、奇跡なのかもしれない。


 「社会人の恋愛2.0」、第2回。いかがでしたか? 社内恋愛中の方は、共感する点も多かったのではないでしょうか。誰かと恋に落ちて、交際する――。大切な人を愛するということは、実は、とてもすてきで、尊いことかもしれません。第3回(3月22日公開予定)は、30代カップルのリアルに迫ります!

取材・文/浜田寛子(日経doors編集部) 写真/吉澤咲子