約2年半の交際を経て結婚 「夫婦にとっていい選択をしたい」

 交際を始めてから約2年半がたった頃、ちょうどさくらさんの転職なども重なり、二人は結婚する。夫婦になってからは、お互いに「選択肢の幅が広がった」と実感しているそう。

 「独身の頃と比較して、単純に『使える財布』が大きくなったことはお互いにとってある意味、リスクヘッジになっていると思います。例えば、独身の頃は、家賃を払いながら自動車のローンを組むことって、負担が大きかったかもしれない。けれど、今は二人の収入を合わせて生活しているので、『家賃を払いつつ自動車ローンを組む』ことも可能になりました。そうした経済的な面で、いろんな選択ができるようになったと思います」(和樹さん)

 「経済的な点もそうですが、心理的ストレスも減ったかな。これも例えばの話ですが、『どちらかが会社を辞めて独立したい』とか、『異業種転職など新しいことに挑戦したい』、という希望を持っていたときに、独身だと心理的な負担が大きいと思うんです。でも、夫婦どちらかが経済的に安定していれば、そうした夢や目標を後押ししやすい。結果的に、二人のほうがいろんな選択肢を持てますし、『私たち夫婦にとっていい選択をしよう』と決めています」(さくらさん)

「社内恋愛はごく自然」「お互いに理解しやすい」

 メリットが多いという社内恋愛。一方、社内恋愛ならではのデメリットもある。「周囲でも、社内で交際していたカップルがその後別れたり、離婚したりしてしまうと、難しさを感じることも当然あります。ですが、裏を返せば、そうした事情を覚悟の上で交際を始める人が多いのも事実。もちろん遊び半分ではないし、真剣な交際へと発展しやすいのかな、とも思います」(さくらさん)

 「確かに、飲み会の場でからかいのネタにされたり、変に詮索されたりする面倒臭さはある。でも、個人的には社内恋愛はごく自然だと思うんです。お互いにスケジュールを合わせやすいし、繫忙期なども理解しやすい。それに加えて、仕事の話も自然にできるので、いい点が多いと思います」(和樹さん)

 「確かに、彼はもともと上司だったので、他の先輩からは聞けないアドバイスを聞けることも多かった。仕事で悩んだときは、とても助かりましたね」(さくらさん)

 交際を経て、夫婦となった二人。今は「毎日が幸せ」だとほほ笑む。

 「自分たちは、『毎日何かしら面白いことが起きている』と思って、生きているんですよね。だから、物事を面白い視点で見ようと思っているし、それを共有できる。たわいない話をして笑ったり、おいしいものを食べたり。そんな日々に、幸せを感じます」(和樹さん)

 「これだけ長くいてもケンカもしないし、楽しく過ごせているのはありがたい。今後も、こんな日常がずっと続けばいいな、と思います」(さくらさん)

「意見が異なるときも、『そういう考え方もあるのか』と思うので、ケンカはしたことがありません」とさくらさん(写真はイメージ)
「意見が異なるときも、『そういう考え方もあるのか』と思うので、ケンカはしたことがありません」とさくらさん(写真はイメージ)

 「社内恋愛はごく自然な恋愛のカタチ」――。「特別な恋愛のスタイル」というものはなくて、本来、育まれた愛の形はどれも自然で、素晴らしいものかもしれない。和樹さんとさくらさんが語った言葉一つひとつが、それを示しているのではないだろうか。


 「社会人の恋愛2.0」、第3回。今回は社内恋愛中の夫婦をご紹介しましたが、いかがでしたか? 「愛する人と家族になる」という奇跡は、意外と、身近なところにあるかもしれませんね。

 次回(4月12日公開予定)は、会社員として働きながら、パラレルキャリアでベンチャー企業の社長を務める正能茉優さん(27歳)の恋バナに密着! 彼女の意外な悩みとは――? ぜひ、第4回も楽しみにしていてくださいね。

取材・文/浜田寛子(日経doors編集部) イメージ写真/吉澤咲子、鈴木愛子