(3) 同時進行ゆえに、決めどころが謎

 マッチングアプリでもう一つ困ったのは、チェックメイトまでの距離感がつかみづらいことだ。私が何人もの男性と同時にやりとりをしているのと同様に、先方も複数の女性と連絡を取っている。それゆえに、デートで互いに好感を持ったとしても、関係を進めるとなると探り探りになるのだ。

 感覚としては、トランプの「7」を手にしたときに近いかもしれない。「7」を切ったら、次に「13(キング)」などの絵柄が来るかもしれないが、「3」が来て後悔する可能性もある。そこでどのような判断をするか、ちょっとした賭けなのだ。

 ある時、デートをして私に好意を伝えてくれた相手が、帰宅後アプリにログインしたようで、しばらくの間「オンライン」と表示されていた。私は「さっき告白してくれた相手が、まだまだ新規開拓をしている」ことを悟り、ズッコケた。彼にとっても、私は「7」だったのね……。

 私なら相手に同じ思いはさせまいと、一度プライベートの連絡先を交換した相手は、片っ端からマッチングアプリ上でブロックした。そうすれば、私がまだ継続していることがバレなくて済むからね。

 ……いやいやいや、これは「浮気はバレなきゃ浮気じゃない」理論と同じくらい、常習犯のやり口やって~~~!とセルフツッコミした。

 クロージングが至難。マッチングアプリが嫌になった3つ目の理由だ。

私には合わなかった、でも応援したいサービス

 私は嫌な女かもしれない。それでも、少なくとも、嫌な女化していく自分にあらがいたい。ものを選ぶかのように、パートナーを選びたくない。

 だから、やめた。

 「考えすぎだ」と言う人もいるだろう。私たちはみんなラベルの中に生きていて、私がこれまで選ばれてきたのも、もしかしたら私が持つ何らかのラベルが、元カレたちの背中を押してくれたのかもしれない。ラベルをきっかけに知り合ったとて、そこから深く知っていけばいいじゃない。ラベルは悪いことばっかりじゃない。

 でも私は、その人の生きざまや思想を初めに知りたい。その人がどれだけ成功していて、どんな車に乗っていて、どんなうまそうな寿司を食っているかという情報より、愛読書は何か、どんなふうに笑うか、バスの運転手さんに「ありがとう」と言えるかを知りたい。アプリの中でじゃなくて、生活の中で知りたいのだ。効率なんていらないから、スローペースに。

 なお「着床大作戦2019」を推進中の友人は、2019年7月現在、彼氏ができ関係を育んでいる。2019年の目標は、着床から「入籍」に下方修正したそうだが。お相手はマッチングアプリ経由ではなかったが、マッチングアプリが彼女の恋愛モードに火を付けたことは間違いないだろう。

 世にあまたあるマッチングアプリよ、これからも数多くの縁結びを頼んだぞ。私は私のやり方で行くからさ。

文/ニシブマリエ イメージ写真/鈴木愛子 構成/浜田寛子(日経doors編集部)