「パートナーは欲しいけど、出会いがない」――。そんな人にとって、マッチングアプリの普及はうれしい社会現象。マッチングアプリを使えば、リアル社会で探し回るよりも早く、好みの相手を見つけられるかもしれません。けれども、恋愛における「効率」って、一体何なのでしょう。今回は、ライターのニシブマリエさんが自身の体験を振り返り、「マッチングアプリをやめた理由」をつづります。

 「私、2019年中に着床を目指すわ」

 2018年の暮れ、数々の合コンを共にしてきた戦友がこう宣言した。

 お付き合いも結婚もすっとばして、着床(受精卵が子宮内膜に落ち着くこと)を目標にする友人の大胆さにほれた。素晴らしい、ぜひ何人でも産んでおくれ。問題は、あなたに今パートナーがいないこと……かな。

 一人で頑張るのは心細いという彼女の「着床大作戦2019」に巻き込まれる形で、私はマッチングアプリの門をたたいた。

「出会い」に対する考え方がアップデートされた

 数年前まで、私は合コンガールだった。これまでに参戦した合コンは推定100回を超える。

 おそらく「女芸人枠」だった私は、合コンで重宝された。すました顔して想像の斜め上を行く下ネタをぶちこんだり、カラオケでジュディ・オングの『魅せられて』を情緒たっぷりに歌い上げたりして、ドッカーンとみんなの笑いを誘うと、延長試合を終えた選手のようにやれやれと一人帰路に就く。

 その後、女子のLINEグループで繰り広げられる「答え合わせ」では、みんなが性格の悪さを思い思いに発揮していて、それぞれが心に隠し持った「ビッチ」を一時的に解放させては共犯関係を楽しんだ。

 そういう意味で、私にとって合コンは出会いの場というより一種のアクティビティだった。女友達が絆を深めるために行く、ディズニーランドのような。あるいは惰性で食べてしまう、深夜のラーメンのような。

 だから、マッチングアプリは画期的だった。わざわざ汚れ役を買わなくても、初めから恋愛前提で出会えるので、なんというか、話が早かった。

 始める前、マッチングアプリは「ヤリモクの巣窟」というイメージがあった。けれども予想に反して、そこにいたのは普通のナイスガイたちだった。出会いに対する考え方が30歳を目前にみるみるアップデートされていくのを感じた。

マッチングアプリを使うことで、「出会い」に対する価値観がアップデートされていった 撮影/ニシブマリエ

 しかしほどなくして、私はマッチングアプリをやめた。彼氏ができたからではない。すてきな男性にはたくさん出会えたが、なんかもう続けられなかった。

 続けていると、自分のことを嫌いになりそうだったから。なりたくない自分になっていく気がしたから。