AIの研究者に愚直にアプローチ

 当時の豊嶋さんはAIの知識は全くなかったが、「可能性があるのかないのかを確かめるために、とにかくAIの専門家に話を聞こう」とすぐ行動を始める。

 AIの知識を身に付けるために、講演会やセミナーに参加。その中で、AIの第一人者である北海道大学の川村秀憲教授の存在を知り、そこで出会ったネットワークを駆使して、直接アポイントを取ることに成功した。

 「川村先生は、私が取り組みたい社会課題の解決へ理解と共感を示してくれ、事業計画の相談に真剣に乗ってくれました」。川村教授の勧めで、「Open Network Lab HOKKAIDO」という創業成長支援プログラムにも応募。このプログラムに採択され、事業コンセプトなどをじっくりと煮詰めながら、システムの開発にも着手していった。「だんだん事業の輪郭がはっきりしてきて、私以外の誰がやるんだ!と使命感のようなものを抱き始めていました」

「私がやらずに誰がやる! そんな気持ちでいました」
「私がやらずに誰がやる! そんな気持ちでいました」
Aillのサービスの肝は、マッチング後のコミュニケーションサポート。男女それぞれにどんな言葉をかければいいのか、相手はどんな気持ちなのかをAIがアドバイスする
Aillのサービスの肝は、マッチング後のコミュニケーションサポート。男女それぞれにどんな言葉をかければいいのか、相手はどんな気持ちなのかをAIがアドバイスする

 トントン拍子に進んでいるようにみえるが、実はこの頃、豊嶋さんはどん底にいた。「会社を立ち上げたときに、助成金と合わせて自分の貯金も700万円ほど創業資金に充てていたんです。その資金でプラットフォームづくりをしていたんですが、最初はなかなか思うような結果が出なくて。結果、お金がなくなってしまった。当時、私の口座にも74万円しかなく、これからどうやって資金を集めるかあてもない状態だったんです」

AI×恋愛で起業「仕事できても彼なし」きっかけ(下)に続く

取材・文/青野梢 写真/洞澤佐智子