doors世代の起業家たちは、いつ事業のアイデアを考え、どうやって起業までたどり着いたのか。何につまずき、何が転機となったのか。起業の先にどんなドアを開こうとしているのか。さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。初回は、AIが恋愛をナビゲーションする世界初のサービス「Aill」(エイル)を立ち上げた、豊嶋千奈さん。彼女が起業を決意した大きなきっかけは、個人的な悩みだった。

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AI×恋愛で起業「仕事できても彼なし」きっかけ(下)

武田薬品工業を30歳で退職し、起業した豊嶋千奈さん。AIが恋愛をナビゲーションする新しいサービスを開発した
武田薬品工業を30歳で退職し、起業した豊嶋千奈さん。AIが恋愛をナビゲーションする新しいサービスを開発した

29歳で「私の人生、これでいいんだっけ?」

 大学卒業後、「医療に貢献したい」という思いから武田薬品工業に入社し、営業職(MR:医薬情報担当者)になった豊嶋千奈さん。トップ営業として社内の女性幹部候補生に選出されるほど活躍し、がむしゃらに働き、着実に結果を出し続けた。「仕事が本当に楽しかったんです。やれば必ず結果がついてきたから」。

 だが、ある時、ふと気がついた。それは29歳になったとき。「あれ、今の私、仕事しかないかも……って」

 「もともと、人生設計で考えていたのは、入社後3年間は全力で仕事をし、結婚・出産を経て、30歳くらいまでに職場に復帰。仕事もプライベートも、バランスを取りつつ充実させる。それが私の理想だった。だから、3年間はとにかく全力投球。でも、いつのまにか、自分でも知らないうちに希望していないキャリアのレールに乗っていた。しかも、やればやるほど結果が出るから、当時の私はてんぐになっていました。仕事は乗りに乗っているのに、人生は想定外の道を歩んでいることに気づいて、愕然(がくぜん)としました」

<豊嶋千奈さんの起業 5つのdoors>1.自分の悩みから事業アイデアを着想/2.社会課題解決の使命感を持つ/3.融資側の立場を理解し、資金を調達/4.メンバーや専門家を巻き込む/5.ピッチ大会に出場する