社内の飲み会に週10回参加

 「会社のことが大好きで、南場さんのことを尊敬していたんです。南場さんは自分が打ち込みたいと思える事業があってすごいな、と。ですが、当時の私には、心の底からやりたいと思えること、のめりこめることがなくて、それがコンプレックスでした」

私には、湧き出てくる「やりたいこと」がなかったんです
私には、湧き出てくる「やりたいこと」がなかったんです

 とはいえ、目の前に与えられたことには真面目に、全力で取り組むタイプ。当時は『キン肉マン』のゲームに関わる仕事をしていたが、全く原作も知らなかった『キン肉マン』を調べあげて好きになり、どんどん仕事に打ち込んでいた。

 入社してからは社内の飲み会に「週10回ペース」で参加。初期配属された部署は歴史あるサービスの一コンテンツで、「ここでは思い描くキャリアが実現できない」と感じ、飲み会で積極的に新規事業のアイデアを話した。結果として、新規事業部への異動をかなえたこともある。

 「新卒で入社してから退社するまで、3年半で4カ所の部署を経験させてもらいました。やりがいや手応えを感じる一方で、やりたいことには出合えていませんでした。そこでちょっと気分を変えて、社外のコミュニティに参加してみようと思ったんです」

初めて参加した社外コミュニティで、運命の出会いが

 そのとき秋元さんが参加したのは、やりたいことでつながる「仕事版のサークル活動」という社会人コミュニティ。「土日で何かライフワークになることを探せれば」という軽い気持ちで参加したという。

 「私の実家は神奈川県で農業を営んでいるのですが、参加者たちと『何か農地でイベントをやろうよ!』ということになって。子どもの頃の私は、祖父母が育てた野菜が大好きで、弟と畑を駆け回っていました。みんなにもぜひうちの畑に来てもらいたいと思って、すぐに引き受けたんです」

 ところが、久しぶりに実家を訪れた秋元さんは愕然(がくぜん)とする──広大な農地は荒れ果て、収穫できそうな野菜は何も植えられていなかった。もはや畑とは呼べず、とても人を呼べるような状態ではなかった。