さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。今回は「IT・STEM分野のジェンダーギャップを解消する」という使命感を持ち、女子中高生向けのオンラインコーディングコースや国際アプリコンペにおける日本チームの支援、政策提言などを行っている一般社団法人「Waffle」を立ち上げた田中沙弥果さん。「常に自分の中で軸を確認しながら動いてきた」という田中さんの起業5つのdoorsとは?

田中沙也果 自分探しから起業 こだわった行動の軸 ←今回はココ
田中沙也果 起業準備&婚活を「戦略的に」同時に完遂

新卒入社後1カ月で退職、自分探しに2年

 世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数で、世界153カ国中121位(前回は149カ国注110位)(2020年)と「ジェンダー平等後進国」である日本。指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4分野から作成されるが、特に順位が低いのが「政治」144位、「経済」115位、「教育」91位で、「健康」は40位となっている。

 具体例としては女性の国会議員数の少なさ、賃金や雇用形態における男女格差などがあるが、「理系は男性」といった強い固定観念があるIT・STEM分野でも、理系の技術者数や、そもそも理系大学に進学する学生数の男女格差、男女の賃金格差なども問題だ。現在、日本におけるIT業界の女性技術者数は15%以下、日本のSTEM分野の学部の男女比はOECDのワースト1位となっている。

 「このSTEM分野のジェンダー格差をどうにか解消したい。課題を解決するには大人向けではなく、就職や進学の前段階でのアプローチの重要性を考え、女子中高生対象のコーディング学習の場「Waffle-Camp」などの運営をするWaffleを2019年11月に立ち上げたのが、田中沙弥果さんだ。

Waffle代表の田中沙弥果さん
Waffle代表の田中沙弥果さん

 IT教育とジェンダー格差の是正を目指す画期的な取り組みが認められ、2020年には日本政府主催の国際女性会議WAW!2020にユース代表、SDGs Youth Summit 2020にも若者活動家として選出された。さらに、Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」に選ばれ、2020年12月21日には「第4回ジャパンSDGsアワード」において、「特別賞(SDGsパートナーシップ賞)」も受賞し、首相官邸で表彰された。

 「一見、輝かしい実績に見えますが、実はこれは、Waffleの活動を世の中に広め、実践していくために戦略的に動いた結果。過去には自分が本当に何をやりたいのか分からず、大学卒業後は約2年間、自分探しをしていた時期があるんですよ」

 田中さんは1991年生まれ、大阪府出身。文系の大学に進学し、卒業後はテレビ番組の制作会社に就職。ところが、男性中心の職場、ましてや新卒1年目が変えていくことは難しく、1カ月で退職した。そこからさまざまな仕事を経験しながら、「自分は本当は何をしたいのか」を自問自答する日々が始まった。

<田中さんの起業5つのdoors>1.自分探しを経ての気づき「起業しかない」/2.自分の「軸」を大事にし、具体化する/3.起業家のもとで起業ノウハウを実践で学ぶ/4.戦略的な婚活で起業時の不安も補う/5.ボトムアップとトップダウンで働きかける