まずは手当たり次第、職種を試してみた

 「どうせ新卒1カ月で辞めた人間を雇ってくれる会社はないだろう、それなら本当に自分がやりたいことをやろうと思って、興味の赴くままいろいろな仕事や職種を経験しました。メイクアップアーティストの仕事に興味を持って勉強したことも。でも、知らない世界を知ることは楽しかったのですが、既に10代から本格的にメイクを学び、仕事をしている人がいる領域で戦っても、ナンバー1にはなれない。

 また、以前から教育に興味があり、塾講師としても働きましたが、やりがいはあるものの、地域限定の草の根活動になるので、もっと全国的に影響を与えるような仕事がしたい。自分にしかできないことで、ずっと続けられる仕事は何だろうと模索した結果、ふと『教育分野で起業したい』と確信したんです」

 とはいえ、その時点では「教育のどのジャンルで起業するか」はノープラン。しかも周囲の友人は就職し、着実にキャリアを積みはじめている時期。自分だけが回り道をしているようで、不安になることはなかったのだろうか。

ノープラン起業なのに不安じゃなかった

 「周囲には看護師や薬剤師など専門職の友人が多かったので、『20代前半の貴重な時間をフラフラしているのは、もったいない』『ちゃんと就職して仕事を覚えないと』と、ずいぶん言われましたね。でも、なぜか自分には『みんなが分かってないだけなんだ、私はきっと何かを成し遂げられる!』という自信がありました。今思うと、中二病みたいなんですけどね(笑) でも、不安になったり、自暴自棄になったりはしませんでした」

 それには、「もしかしたら、両親の育て方が影響しているかもしれない」と田中さんはいう。

 「両親は、叱るときでも『あなたが悪い』とは言わない。私は、『あなたの〇〇な態度がよくないから、次は改めようね』と、人格を否定されたことは一度もないんです」

「両親のおかげか、私の姉も妹も自己肯定感が高いですね」
「両親のおかげか、私の姉も妹も自己肯定感が高いですね」

 起業のテーマを探しながら働くうちに、フェイスブックの「#起業女子」イベントを手伝ったり、米国シリコンバレーに本部があり、「テクノロジーにおける性差をなくすこと」を目標に活動しているアメリカの非営利団体の日本支部を立ち上げたりしながら、次第にプログラミング教育業界への興味が深まり始めた。