自分に足りないモノが見えてきた

 「教育の中でも、できればプログラミング教育に関わることで起業したい」という輪郭が見えてきてからは、Life is Tech!やTech Campといったプログラミングサービスを提供する起業家の情報をくまなくチェック。そのうちに、「全ての子どもがプログラミングを楽しむ国にする」をミッションに掲げ、日本全国でプログラミング教育の普及活動しているNPO法人「みんなのコード」の代表・利根川裕太さんと知り合った。

 利根川さんは大学卒業後、森ビルを経て、インターネット印刷のラクスルの創業に関わり、みんなのコードを立ち上げ、さらに事業を広げていくというタイミングだった。

 「それまでの私は場当たり的に海外のイベントやシンポジウムのサポートをしていましたが、その経験を次にどうつなげていくかが、分からなかったんです

「自分には圧倒的にスキルと人脈と経験が足りなさすぎる、と思っていたときに利根川さんと出会ったんです」
「自分には圧倒的にスキルと人脈と経験が足りなさすぎる、と思っていたときに利根川さんと出会ったんです」

アクションを起こすときの軸を4つに絞る

 田中さんは何か行動を起こすときに、必ず「自分のなかの軸」を考えるという。「圧倒的なスキル・人脈・経験不足」を最短で解消するためには、田中さんが必要だと思ったのは、こんな条件だった。

(1)事業を連続して立ち上げているシリアルアントレプレナーのすぐ下で働くこと(起業の手順を知るため)
(2)プログラミング教育系の職場であること(自分の目指す分野で働くため)
(3)メンバーは5人以内
(4)東京で働く

 この条件が明確になったタイミングで出会ったのが利根川さんだった。

 「(1)~(4)までの条件をすべて満たしていて、ドンピシャで。何よりも代表の利根川さんには、『この人と一緒に働きたい』という魅力がありました。もう、お給料の額も聞かずに、『ぜひ手伝わせてください!』と転職を決めていました」

 2年間の自分探しを終え、2017年1月にみんなのコードに参加するとともに上京。ここから一気に、田中さんは自分の起業へ向けても加速することになる。

 加速のきっかけになる出来事や、戦略を持ってパートナー探しを同時進行させた田中さんのストーリーは、後編「田中沙弥果 起業&パートナー探しを『戦略』で同時完遂」

取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子