さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。今回は「IT・STEM分野のジェンダーギャップを解消する」というミッションの下、一般社団法人「Waffle」を立ち上げた田中沙弥果さん。「常に自分の軸を意識して、動いてきた」という田中さんは、起業1年目でForbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」、日本政府主催「第4回ジャパンSDGsアワード」において、「特別賞(SDGsパートナーシップ賞)」も受賞。田中さんの「戦略的な起業」とは?

田中沙弥果 自分探し経て女子学生向け教育事業を起業
田中沙弥果 起業&パートナー探しを「戦略」で同時完遂 ←今回はココ

 新卒入社した会社を1カ月で辞め、約2年間の自分探しをしながら、起業のテーマを探していた田中沙弥果さん。「プログラミング教育関連で起業したい」と決意した頃、全国規模で子どもへのプログラミング教育の普及を行うNPO法人「みんなのコード」代表・利根川裕太さんと知り合い、2017年1月に転職と上京を果たした。

 「当時のみんなのコードは、まさに事業を立ち上げて拡大する段階。利根川さんのすぐ下で働けたことが、本当に勉強になりました。文部科学省とのやり取りから、これから実際にプログラミング教育を授業に取り入れていく小学校教員向けの講習会会場の設置や告知、メンバーの採用活動……と全方位で関わることができました。

 起業のときに苦しいことって、やり方が分からないのに、とにかく自分で打席に立ち、球を打たないといけないこと。私の場合は、起業家の下で働けたことが、いいシミュレーションになり、起業の際の問題点への解像度が上がりました

職場では、事前に起業宣言

 さらに、職場では「私は、将来起業したいからここにいます」と最初から、自分の将来の夢を宣言。みんなのコードのメンバーや活動にかかわる経営者の人たちに、どういう考えで起業したのか、どんな思考法を身に付けているのか、聞いて回ったという。

「先人たちに聞いたアドバイスをメモして、自分の中に落とし込みました」
「先人たちに聞いたアドバイスをメモして、自分の中に落とし込みました」

 「私がいずれ起業することが分かっていても、皆さん親切に教えてくれたし、応援してくれました。『起業したい人を応援しよう』というネットワークのなかに入れて、私は本当に幸せだったと思います。

 当時からお世話になった方々は、時にはオフィスの会議室を貸してくれたり、私たちが主催するイベント情報を積極的に宣伝してくれたりするほど。私自身、その厚意に甘えっぱなしではなく、お世話になった方やアドバイザーにはWaffleの活動内容について定期的に報告し、アワードを受賞したときなど節目には必ず、感謝を伝えるなど、恩を忘れないように心がけています」

 一方で、自らの起業を加速させる出来事もあった。みんなのコードに転職して1カ月後の2017年2月、女子中高生を対象としたプログラミングコンテストに同行したときのことだった。

<田中さんの起業5つのdoors>1.自分探しを経ての気づき「起業しかない」/2.自分の「軸」を大事にし、具体化する/3.起業家のもとで起業ノウハウを実践で学ぶ/4.戦略的な婚活で起業時の不安も補う/5.ボトムアップとトップダウンで働きかける