引きこもりバイト生活の末に見えたこと

 26歳で人間不信に陥り、引きこもり生活が始まった。「それでも、花には触れたくて生け花を習ったり、生花店でバイトをしたり」。しかし、バイト先でも心ない言葉に傷つけられた。

 「店長に『興津さんって、勉強はできるかもしれないけど不幸だよね』って言われて。悔しかったですね。ここでバイトをすぐに辞めたら、またダメな人間だと思われると思って、歯を食いしばってバイトは続けていました」

 私は、完全に社会復帰できる日が来るのだろうか――。いつしか引きこもりバイト生活は1年半に及んでいた。

 一方、満身創痍(そうい)の中、花に触れていると、「やっぱり花は人の心や体に必要なもの」だと実感した。

「花の命は短くて、生きている間しか輝けない。まるで、人の一生を凝縮しているみたいだと感じました」。フラワリウムの中には「コンクリートの隙間から咲くタンポポ」にヒントを得た作品もある
「花の命は短くて、生きている間しか輝けない。まるで、人の一生を凝縮しているみたいだと感じました」。フラワリウムの中には「コンクリートの隙間から咲くタンポポ」にヒントを得た作品もある

 「人はそのはかない命の美しさに感動するから、癒やされるんだと気づきました。花の美しさを永遠に閉じ込めるには、どうしたらいいんだろう? そんな方法があればいいな、と漠然と考え始めたのはこのときです。

 当時、27歳。周りの友達も社会に出て活躍し始めていました。ふと、今までの自分の努力やキャリアをこのまま何もしないことで諦めていいものか、と焦りに似た気持ちがわいてきたんです。このままじゃいけない。やっぱり挑戦しよう。社会復帰しようと決意して、これまでの経験を生かした仕事ができないか探し始めました」。興津さんは少しずつ、復職への一歩を踏み出した。

自信喪失どん底が起業の原動力 フラワリウム開発(下) に続く

取材・文/三浦香代子 写真/鈴木愛子