doors世代の起業家たちは、いつ事業のアイデアを考え、どうやって起業までたどり着いたのか。何につまずき、何が転機となったのか。起業の先にどんなドアを開こうとしているのか。さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。今回は外部人材を活用したオンライン教育プラットフォーム「複業先生」などのサービスを提供するLX DESIGNの金谷智さんに話を聞いた。

前編 校長6代教員一家 教師目指すも業界への危機感から起業 ←今回はここ
後編 小学校の先生→起業 社会と学校をつなぐ「複業先生」

教員一家の長男として誕生

 両親共に教員、6代にわたって校長先生が続いているという教員一家の長男として誕生した金谷智さん。「両親が一生懸命に学校の先生をしている姿を見て、自分自身も幼いころから将来は『いい先生になりたい』と思っていました」

 もちろん、起業家になるという選択肢はなかった。「当時、起業家で知っている人と言えば堀江貴文さんぐらい。そもそも、起業家が何やっているのかも分かっていなかったですし、富山県という地方で生まれ育った私には、『東京にはそういう仕事をしている人がいるんだな』というくらいの認識でした。憧れもなければ、自分の夢リストに1回も書いたことはありませんでしたね」

 そして、高校卒業後は教員を目指して東京学芸大学へ進学。だが、大学1年生のときにオーストラリアのシドニーに留学したことが転機となる。金谷さんは、そこで初めて出会った起業家たちに刺激を受けたのだ。

1990年、富山県高岡市出身。東京学芸大学卒業後、都内の公立小学校勤務などを経て、「LX DESIGN」を立ち上げた。
1990年、富山県高岡市出身。東京学芸大学卒業後、都内の公立小学校勤務などを経て、「LX DESIGN」を立ち上げた。

海外留学で初めて「経営者」と出会う

 「両親からは『教員にとっては日常のあらゆることは学び』と教えられ、とにかく経験を積みたくて、オーストラリアに1カ月間の短期留学に行きました。そこで、留学エージェントの経営者と出会う機会があったんです。彼は、世界のいろいろなカルチャーや人に触れ、その醍醐味を僕に教えてくれました。そうしたら、自分の世界が急激に広がったんです。

 日本での仕事を辞めてオーストラリアに単身移住し、仕事をしている彼をとてもかっこいいと思いました。それと同時に、感じたことがあるんです。例えば、英語の先生として子どもに英語を教えることも素晴らしい仕事ですが、こうして子どもに選択肢を広げてあげる仕事も、教育の一つだな、と。若い世代への影響力がある『起業家』という存在が、自分にとって目標になった瞬間でした」

 初めての留学をした19歳、自分のキャリアを考える上で大きな刺激を受けた金谷さん。日本に帰ってからは、業種問わず、さまざまな事業に携わる経営者と積極的に会うようにした。

<金谷智さんの起業5つのdoors>(1)海外留学で起業家に出会う/(2)シリコンバレーに滞在/(3)あえて違う業界に飛び込む/(4)現場で他の先生とぶつかる/(5)教育業界への強い課題感