好きな世界にハマり、「人生のリセット」

 「店長から『この漫画、面白いよ』と、あるスポーツ漫画を薦められて読んだら、ドハマり。そのスポーツ自体好きになって、選手の追っかけをするようになり、観戦するために全国各地に行くようになったんです(笑)。ADHDの特徴の一つ、衝動性が発揮されました。ハマるものができると猪突(ちょとつ)猛進なんです

 追っかけをしているうちに、取材に来ていたスポーツ雑誌の編集者と知り合いになった。その人の勧めで、和田さんも編集プロダクションでバイトするように。そして、大学4年生の終わりに差し掛かったとき、社員にならないか、と言われて快諾した。

 「単位不足で、既に留年が決まっていました。1年留年しても卒業できるとは限らず、また引きこもりになって2年かかるかもしれない……。それなら大学を中退して、就職して人生をやり直したい! と思ったんです。すべてをリセットしたい! って

「常に『自分を変えたい』という気持ちが、心の中にありました」。2018年12月にオープンした「overE銀座試着専門サロン」には、じっくり相談できるスペースもある
「常に『自分を変えたい』という気持ちが、心の中にありました」。2018年12月にオープンした「overE銀座試着専門サロン」には、じっくり相談できるスペースもある

なぜ、マラソン中に「起業」を決めたのか

 そうして1年半がたとうとした頃、会社の人に誘われるがままに、東京マラソンに応募してみたのだという。競争率がすごく高いから、どうせ落ちると思ったらなんと当選してしまった。

 「私は大の運動嫌いで、マラソンは苦手中の苦手なのですが、高い競争率をくぐって当選したことに心が動いたんです。自分の人生に、何か特別なことが起きないか、と期待していた時期だったので。

 走っている最中は苦しくて、何度もギブアップしようとしましたが、沿道で応援してくれる人たちのおかげで、魔の30キロもなんとか乗り越えられて。感謝と感動で胸がいっぱいになった。そうしたら、引きこもりになって失った自信を取り戻していくような感じがしたんです。このマラソンにチャレンジできたのだから、自分の人生にもチャレンジできるかもしれない、と思いました」