自分を生かすことができるかもしれない

 真っ先に頭に浮かんだのは、「起業」の二文字だった。

 実は、和田さんは引きこもり時代によく古本屋に行き、ビジネス書を読んでいた。そして、あるとき「ADHDの人は起業家に向いているということを知った」という。

 「ADHDの人は、よくも悪くも『普通の人』と違って、アイデアが豊富だったり、行動力があったりすると書かれていました。とにかく、そのフレーズが目に飛び込んで、心に刺さっていたのですよね。当時の自分は学校にも行けず、何もできていないけれど、起業をしたら自分を生かすことができるのかもって。そう思っていたことを、走りながら思い出したんです」

 マラソン出場後すぐ、当時住んでいた埼玉県にある「創業・ベンチャー支援センター埼玉」が開催するセミナーに通い、起業の仕方について一から学んだ。事業のアイデアも練り、4案作ったうちの1つが、胸が大きな女性のためのアパレルブランドだった。

overEには、シャツ、ブラウス、ワンピース…和田さんこだわりのデザインアイテムが並ぶ
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 「もともと、いろいろなアイデアを考えるのが好きで、中高生のころからずっとアイデア帳をつけていたんです」。それが功を奏したのだ。

 続きは、引きこもりを経て、ADHD生かし逆転起業(下)

取材・文/茅島奈緒深 写真/洞澤佐智子