doors世代の起業家たちは、いつ事業のアイデアを考え、どうやって起業までたどり着いたのか。何につまずき、何が転機となったのか。起業の先にどんなドアを開こうとしているのか。さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。今回は、胸が大きな女性のためのアパレルブランド「overE」を、アパレルの知識ゼロから立ち上げて運営する和田真由子さんに話を聞いた。
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引きこもりを経て、ADHD生かし逆転起業(下)
下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンの調査によると、日本人女性の4人に1人がEカップ以上。彼女たちの主な悩みは、太って見える、胸に合わせると服がブカブカ、シャツやブラウスのボタンが外れないか心配、ということ。それらの悩みを自身も抱えていることから事業のアイデアを思いつき、胸が大きな女性のためのアパレルブランド「overE」の企画・製造・販売を手がけるのが、エスティーム代表の和田真由子さんだ。
彼女が起業を決意したのは2015年2月、東京マラソンを走っている最中だった。
「走るのが大嫌いなのに参加することになって、苦しさがピークに達する魔の30キロをヘロヘロで走っていたら、ふと起業にチャレンジしたいと思って……」
いったいなぜ、マラソンとアパレルブランドの起業が結びついたのか。彼女のバックグラウンドをひもとこう。
大学時代の引きこもり生活
和田さんは出身地の東北から関東の国立大学に進学して早々、学部の人間関係につまずいてしまった。
「なんだか、孤立してしまったんです。高校までは理系でしたが、文系に転向して大学に入学したことや、学生の8割が入る寮に入らなかったことが原因かもしれないのですが、はっきりした理由は分かりません。気づいたら、夏休み前には一人で過ごすことが多くなりました」
授業で分からないことがあっても、誰にも聞けないことでも苦しみが増した。あとで分かったことだが、和田さんはADHD(注意欠如・多動性障害)で、特に聴覚からの情報を処理するのが苦手だった。講義を聞いてもすんなり理解するのが難しく、高校までは分からないことは友達に聞けたが、大学でそれができなくなった。