バイオ分野のスタートアップ 面白くなるかも

 「それを見て、私の父が売っている微生物もいけるのではと思ったのです。父は北海道足寄町の牧場主と、高速で生ゴミを処理するための微生物群を開発していました。素人が簡単に事業化できる分野ではないですが、スタートアップが資金調達もできているのだから、やってみたいと……。私は経営やバイオ分野の知識がほとんどなかったのですが、これまでのPRやブランディングの経験を生かして、情報発信し、資金調達ができれば、面白い展開があるかもしれないと思いました」

 父の事業に関わりたいと思った西山さんは、北海道に住む父に打診してみた。

 「父に『これから会社経営はどうするつもりなの?』と聞きました。父は還暦を過ぎていて、病気も患っていたので、そんなに長くやるつもりはなさそうな感じだったんです。『引き継ぐ人を探しているんだよね』と言われて、『私やりたい!』というのが最初でしたね。本当に超ラフな会話でした(笑)」

 2019年夏に、父の会社を継ぐ決心をし、PRの仕事を辞めた。全く知識のなかったバイオベンチャー設立へ向けて、西山さんは動き出した。

 後編へ続く。

取材・文/齋藤有美(日経xwoman doors) 写真/北山宏一

下編「コロナ禍でバイオベンチャー創業 融資先探しに奔走」では、次のストーリーを展開

■別法人を設立して、技術だけを買い取る
■新会社設立に賛同を得られず
■VCや投資家に相談
■難航を極めたコロナ禍での資金調達
■北海道銀行だけが融資
■競合他社の壁が立ちはだかる
■取引先を大転換
■小学校の残さで実証実験
■自社ラボで研究 父の「菌」を超えた
■エビデンスを研究中
■「ガウディの建築」のような事業