doors世代の起業家たちは、いつ事業のアイデアを考え、どうやって起業までたどり着いたのか。何につまずき、何が転機となったのか。起業の先にどんなドアを開こうとしているのか。さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。今回は微生物を使って、生ゴミを腐敗する前に水と二酸化炭素に変えるバイオマス処理システムを提供するスタートアップ企業「komham」(コムハム、札幌市)を立ち上げた西山すのさんに話を聞いた。

前編 西山すの 親のために就職、ニート経てPR職、起業へ ←今回はここ
後編 コロナ禍でバイオベンチャー創業 融資先探しに奔走

超高速で生ゴミを分解する独自技術

 2020年1月にバイオマス処理システムを提供するバイオベンチャーのkomhamを立ち上げた西山すのさん。生ゴミなどの有機性廃棄物を独自開発した微生物群「コムハム」を使って、腐敗する前に水と二酸化炭素に変える技術が高く評価されている。

西山すのさん。北海道苫小牧市出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、大手アパレル会社に入社。その後、PR会社やゲーム会社の広報職を経験したのち、クリエーティブラボ「PARTY」にPR職として入社。フリーランスを経て、2020年にkomhamを立ち上げる
西山すのさん。北海道苫小牧市出身。立命館アジア太平洋大学を卒業後、大手アパレル会社に入社。その後、PR会社やゲーム会社の広報職を経験したのち、クリエーティブラボ「PARTY」にPR職として入社。フリーランスを経て、2020年にkomhamを立ち上げる

 電力は使用せず、高額な大型プラントも必要ないため、コストもかからない。今年から、毎年1万5000トンの生ゴミが発生している自治体と連携して実証実験も行い、数年後には3分の1の5000トンをコムハムで処理することを目指している。

親のために渋々始めた就職活動

 大学卒業後、新卒で大手アパレルに入社した西山さん。当時は起業という選択肢やバイオ分野への興味も全くなかったそう

 「大学時代、1年半ニューヨークの大学に留学していました。4年生の6月に帰国すると、もう就職活動が始まっていて。大半の大手企業は採用活動が終わってしまっていたんです。そんな状況を目の当たりにして、就活を真面目にやりませんでした(笑)。でも、親からは『就職してほしい』という雰囲気を醸し出されていたので秋採用に挑戦。ただ、行きたい会社はなかったので、親が知っている大手企業に就職すれば満足してもらえると考え、活動していました」

 大手アパレル会社から内定をもらい、2011年の4月に社会人生活がスタート。店舗の販売員として働き出した。そのときに、ネット記事で目にしたのが有名クリエイターらによって立ち上げられたクリエーティブラボ「PARTY」の活躍だ。

 PARTYは斬新な商品開発、さらに最新技術を駆使した宣伝手法が評価を浴び、国内外の主要アワードで多くの賞を受けた。メディアや広告の仕事に興味のあった西山さんは衝撃を受けた

<西山すのさんの起業5つのdoors>(1)大手アパレルを1年で退職し、自分を見つめ直す/(2)スタートアップの面白さにドはまり/(3)自分で「世の中のために何かをつくり出したい」という強い願望/(4)バイオテック分野での勝算/(5)コロナ禍での資金調達に奔走