doors世代の起業家たちは、いつ事業のアイデアを考え、どうやって起業までたどり着いたのか。何につまずき、何が転機となったのか。起業の先にどんなドアを開こうとしているのか。さまざまなフェーズに立っている注目の起業家を取材する連載「起業 NEXT doors」。今回は微生物を使って、生ゴミを腐敗する前に水と二酸化炭素に変えるバイオマス処理システムを提供するスタートアップ企業「komham」(コムハム、札幌市)を立ち上げた西山すのさんに話を聞いた。

前編 西山すの 親のために就職、ニート経てPR職、起業へ
後編 コロナ禍でバイオベンチャー創業 融資先探しに奔走 ←今回はここ

別法人を設立して、技術だけを買い取る

 西山さんの父親らが開発した、自然由来の微生物で生ゴミなどを超高速分解できる「コムハム」。その事業をそのまま継ぐのではなく、別法人を設立して、技術だけを買い取ることを考えた。

 「父はもともと、祖父から受け継いだ全く別事業の会社を経営していました。その会社の経営が傾き始めたころ、父は牧場と手を組んで微生物の製造を始めたんです。一般的な話をすると、2代目の社長は野心がないと、なかなか1代目以上のことはできないですよね。私はそのまま継いで、コムハムを製造・販売するだけでは事業は成長しないと感じました。なぜコムハムがすごいのか、研究をして科学的根拠を導き出し、安全・安心なサービスを運用していかないと事業は大きくならないと思ったんです」

 父親は西山さんの提案を快く受け入れてくれた。しかし、15年以上もコムハムを地道な営業活動で売り続け、10年近く導入を続けている取引先もあったため、事業パートナーはそう簡単に首を縦に振らなかった。そして、起業の夢を果たすもすぐにコロナ禍に見舞われるなど、西山さんには数々の困難が待ち受けていた。

<西山すのさんの起業5つのdoors>(1)大手アパレルを1年で退職し、自分を見つめ直す/(2)スタートアップの面白さにドはまり/(3)自分で「世の中のために何かをつくり出したい」という強い願望/(4)バイオテック分野での勝算/(5)コロナ禍での資金調達に奔走