とはいえ、他に入りたい企業もない。自分は、社会人に向いていないのかもしれない。そう感じていた矢先、東日本大震災が起き、就活も選考が一気にストップしてしまった。「そこで、とりあえず教職を取ろうと、地元での教育実習のために地元の宮崎に帰ることにしました」

表に出るだけが仕事じゃない

 「教育実習をしながら実家で過ごしていたとき、偶然、『宮崎サンシャインレディ』という地元の観光大使を募集するCMを目にしたんです。『まだ何かになれるかもしれない』という気持ちもあって何気なく応募したら受かって……。月に数回、東京から通いながら、観光大使の仕事をさせてもらいました」

 毎回実費で宮崎に帰っていたため、「仕事のギャラより飛行機代が高くついた(笑)」というが、坂梨さんは、その仕事の現場で大きな学びを得た。

 「それまでは、芸能人やアナウンサーなど表に出るわかりやすい仕事しかイメージできていなかったのですが、企画する人、撮る人、調整する人、ゼロから物を作る人……と、いろいろな人とかかわる中で、面白いと感じる仕事の選択肢が増えたんです」

 そして、アルバイトでためたお金で自ら学費を払い、半期の休学をした。「読者モデルをしたり、アナウンサースクールに通ったり……学生時代はとにかくマウンティングがあるような世界で走り続けていたので、この休みで自分のペースを取り戻すことができました」

「ずっと何かにがむしゃらに取り組んできたから、自分にとっては初めての長いお休みでした」
「ずっと何かにがむしゃらに取り組んできたから、自分にとっては初めての長いお休みでした」

 そして、新卒では30人規模のネット通販のベンチャー企業に入社し、EC事業に携わった。1年ほど勤めた後、学生時代からの友人から誘われ、社員4人のスタートアップに転職を決めた。