刺激にあふれたスタートアップの日々

 「人事も経理も法務も整っていない環境です。年収アップが見込めるわけでもない、とにかく働きづめの状態でしたが、こんな夢にあふれた仕事はない!と感じるくらいスタートアップの世界に魅せられてしまったんです」

 大きな経営危機も経験したが、「弱音を見せることなく、関係者に巧みに根回しをしてあっという間に解決してしまった社長の姿に、経営者とは何たるものかを学ばせてもらった」という坂梨さん。

 経営者は、毎日決断の連続。短期的な収益にはつながらなくても、長期的に事業を回すために必要なものを見極めなくてはいけない。

 「私は隣でその決断を見ながら、よく『なぜ、メリットがあるように思えない判断を下すの?』と尋ねていました。だけど、事業がどんどん成長していく様子を見ているうちに、私もスタートアップの課題だらけの毎日を楽しめるようになっていきました。今の私は毎日決断をする立場ですが、いつも『彼だったらどう判断するだろう?』と思い浮かべるくらい、私の仕事観に大きな影響を与えてくれました」

 坂梨さんは、一度自分の市場価値を確認したいと、半年間フリーランスに転向するが、社長退任のタイミングで会社に呼び戻され、COOとしてオファーを受ける。そして、26歳という若さで子会社の社長に就任した。しかし、その半年後には、社長としてのポジションを手放そうと決意する。