「このジャンルを共有するならこの人」
人生で欠かせないものが複数あり、それぞれのジャンルでベストマッチな相手と時間をともに過ごしている――。そのような視点で今回の質問を見た場合、S美さんの行動はとりわけ不自然なものには見えません。
思えば私にも、「このジャンルを共有するならこの人」という相手がたくさんいます。例えば私の趣味には演劇鑑賞や海外サッカー、競馬や古着屋めぐりなどがありますが、それぞれにベストマッチな相手がいます。また、同じ出版業界で働く同世代の仲間、ジェンダーの話題を共有する「フェミ友」、子育ての愚痴を語り合う友人などがいて、テーマの特化したLINEグループも複数あり、活発なやりとりが続いています。
仕事でも子育てでも私生活でも、日々いろんなことが起き、心身の調子は上下動を繰り返しています。そういう中で、楽しいことやつらいことを共有できる複数の依存先があることは、自分にとって大きな助けになっている実感があり、おそらくS美さんもそのような日々を生きているのではないかと想像します。では、何がS美さんをここまで悩ませているのでしょうか。
文/清田隆之(桃山商事) 写真/PIXTA