母に伝えた。父にはその1年後に

 母親にはInstagramでのカミングアウトから半年後に、実家に戻って直接ゲイであることを伝えた。

 「両親とも、僕が女装をしていることは知っていたの。母は『分かってたよ。Hiroが決めたことなら何も言わない』って気軽な感じで言うんだけど、目からはポロポロ涙がこぼれ落ちていて。母が自分の感情を立て直そうと頑張っている感じが分かって、そのときほんの一瞬だけ、どうしてゲイになっちゃったんだろうって思ったな……」

 父親に伝えられたのは、そこからさらに1年後。既に「ミス・ポセイドン」として、新宿二丁目で働き始めていた。父親はいつも寛大だったが、昔から曲がったことが大嫌いで、頑固な一面もある「漢(おとこ)」タイプの人間。セクシュアリティを告白して、どんな反応をするかが読めなかった。

 恐る恐る「親父さ、俺が二丁目で働いてて、女装してること知ってるよね?」と切り出す。「ああ……うん」と返ってくる。

 「それってどういうことか分かる?」

 「おまえ……女の子にあまり興味がないのか?」

 「『あまり』じゃなくて、まず興味がない。性的対象じゃない。今もお付き合いしている男性がいるんだ」

 10分ほど沈黙が続く。重い空気を破ったのは父親の一言だった。

 「俺、おまえに『孫の顔が見たい』って言ったこと一度でもあるか?」

 ただその一言だけ。父は多くを語らなかった。Hiroさんは、目頭から次々こみあげてくる熱いものを我慢できなかった。ついに言えた最後の一人。大きく息を吸い込み、大きく息を吐き出すと、視界がいつもより明るくなっていた。

 「親にカミングアウトしたときの定型文ってあるじゃない。『おまえが生きているだけで幸せだから』みたいな。だからある程度シナリオは描いていたんだけど、いざ自分が体験すると、自分をよく知る両親からの言葉の重みってやっぱりすごい。生きていけると思えたくらいだから