「女の子ってさ、得だよね」という男性の言葉に怒りが湧き出した――。女性が「選ばれる」時代に終止符を打ち、「選ぶ」時代に進むために、私たちは声を上げ続けることが大事。常日頃、そんな思いを抱いているライター、ニシブマリエが綴ります。

粗野な発言――、でも悪気はない。これが問題

 ある日の私は、静かに怒っていた。食事をしながら「この人、いいんじゃないかな」と徐々に気持ちを高め始めていた相手が、こんなことを口走ったからだ。

 「女の子ってさ、得だよね。食事もおごってもらえるし、ゲタ履かせてもらって男より早く昇進できたりするじゃん?」

 ちょっと待って、何を言い出すんすか。ゲタ履かせてもらってというか、その女性が単に優秀だっただけではと、詰めたくなりながらもかろうじて笑顔を残しながら、「本気で言ってる?」と念を押してみた。彼はきょとんとした顔で、自分の何がまずかったのかも分からないご様子。さらに会話は恋愛の話に発展し、悪気のない粗野な発言は続く。

 「ゲイが存在しててもいいけど、自分が好かれたら気持ち悪いかな」

 これは私的にアウトだった。そんなお前に好かれそうになっている私の気持ちよ。どこぞのゲイが憑依して、何が悲しくて自分のこと気持ち悪いと思う輩を好きになんねん! お前なんかこっちから願い下げじゃ! と思わず叫びたくなるのをぐっとこらえる。「ゲイも選んでるんだから、わざわざあなたのことは好きにならないと思うよ」と最大限マイルドな言葉を選び、おごられてたまるかと強引に夏目漱石3枚を渡して帰路に就いた。

 リアルでもSNSでも、普段から付き合いがあるのは基本的にダイバーシティ&インクルージョンの考え方ができる人たち。そのためか、こんなに粗野で、悪い意味で素直な人を目の当たりにしたのは久々だった。「まだいやがったか」という気持ちになった。いやきっと、今でもそちらが多数派なんだろうけど。