渋谷109で感じたファッションの潮流の変化

 上京後、アルバイトを探している時に渋谷109を思い出しました。ほぼ全ブランドに履歴書を送ったのですが年齢制限に引っかかってしまい、最終的にはショップの張り紙を見て「雇ってもらえませんか?」と直談判をしながら歩いて回りました。その結果、ギャル系ファッションの店で働けることになり、高校に通いながらアルバイトを開始。ショップ店員の仕事は、楽しいことばかりでした。

 特に好きだったのは、お客さんとのコミュニケーションです。在庫の数や色を頭に入れ、お客さんの好みや要望を聞きながら「納得感が得られる買い物をしてもらおう」と考えて接客していました。日によっては自分が着ている商品が飛ぶように売れることもあり、完売するたびに着替えていたんですよ。多い日は1日に3~4回、服を変えていました。

 そのアルバイトの休憩中に109の前でスカウトを受け、ギャル雑誌『Ranzuki』で読者モデルとしてデビューすることが決まりました。憧れの109で大好きな服に囲まれて働き、中学時代からの愛読誌でモデルにもなれて、有り難い環境でした。ちょうどその頃、海外からファストファッションが続々と日本に入ってきて、浸透していって。ファッション業界の変化を肌で感じるようになりました。

 例えば、接客をしていると「コレかわいいけど、さっき別の店で似たものをもっと安く売ってたよね~」っていう女の子たちの会話を耳にすることが多くなったんです。すると、自分たちのブランドとしても「価格を落とさなきゃ売れない」という認識が強まってきます。価格優先でものを作らなくてはいけない――。そんな雰囲気がまん延してくる実感はありました。

渋谷109でショップ店員をしていた頃(鎌田さん提供)
渋谷109でショップ店員をしていた頃(鎌田さん提供)