「最近、疲れやすくなった」と感じる人は「隠れ貧血」を疑ってみては。健診で見つからないため放置する人が多いが、実は健康と美容の大敵だ。
この記事は、「日経ヘルス」に2020年2月号に掲載された記事を転載したものです。

健診で調べない「フェリチン」15ng/ml以下は治療の対象

 「隠れ貧血」って知っている? これは専門的に言うと、「潜在性鉄欠乏症」のことだ。貧血(鉄欠乏性貧血)が、血液中のヘモグロビンの濃度でわかる(成人女性は12g/dl未満)のに対し、隠れ貧血は、フェリチンの値で診断する。フェリチンはたんぱく質と結合して肝臓などに蓄えられた貯蔵鉄の指標だ。

 「鉄が不足するとまず貯蔵鉄が使われ、それが枯渇すると血液中の鉄が減少し、貧血になる。隠れ貧血は、血液中に鉄はあるが緊急時の蓄えである貯蔵鉄が不足した状態」と聖路加国際病院人間ドック科部長の岡田定さん。つまり、「隠れ貧血」の人は、月経時や妊娠時など血液の需要が高まる時期に貧血になりやすい。

 酸素は血液中のヘモグロビンと結合して全身に運ばれる。ヘモグロビンは鉄を材料にして作られる。だから血液中の鉄の不足はヘモグロビンを低下させて体を酸欠状態に陥れる。その結果、倦怠感、息切れなどの症状が出るのだ。

 20~40代女性の4割以上が隠れ貧血とされる(※1)が、「健診ではフェリチンを測らないため、気づく機会が少ないことが問題」とナビタスクリニックの山本佳奈さんは指摘する。

 近年、「ヘモグロビンが正常でもフェリチンが15ng/mlを切ると全身倦怠感が出ることがわかってきた。うつやパニックの原因になることも」と岡田さん。

 「女性の不定愁訴のほとんどに隠れ貧血や貧血が関与している」と考える岡田さんは、不定愁訴のある人に鉄剤を処方している。「するとほぼ2週間で元気になる。だるいのは年のせいと思っていたら、実は隠れ貧血だったという例は非常に多い」。

 下のような症状がある人は、隠れ貧血を疑ってみて。そして「もしや」と思った人は、「1日10~20mgの鉄のサプリメントを試しに2週間のんでみて。それで体調がよくなるなら、隠れ貧血の可能性大」と岡田さんは薦める。

 ちなみに、「フェリチンが15ng/ml以下なら治療対象になるのだが、このことが医療者にあまり知られていない。だから現実的には、症状がある人が『倦怠感があるのでフェリチンを測りたい』と申し出るしかない」(岡田さん)状況なのだ。

実はフェリチン検査で「異常なし」でも安心は禁物。「女性の最低値を4~5ng/mlとする検査会社が多いが、基準値を求めたときの母集団に隠れ貧血の人が相当数おり、値が低くなっている。日本鉄バイオサイエンス学会が設定した25~250ng/mlを基準値の参考にして」(岡田さん)
実はフェリチン検査で「異常なし」でも安心は禁物。「女性の最低値を4~5ng/mlとする検査会社が多いが、基準値を求めたときの母集団に隠れ貧血の人が相当数おり、値が低くなっている。日本鉄バイオサイエンス学会が設定した25~250ng/mlを基準値の参考にして」(岡田さん)