摂取目安量が改定され8.5μg/日に引き上げ
これほど重要な栄養素だが、Dはどの年代でも85%以上の女性で不足している(下グラフ)。こうした実態を受けて、厚生労働省は2020年版の「日本人の食事摂取基準」で、15歳以上女性のDの1日摂取目安量を5.5μgから8.5μgに引き上げた。
「米国とカナダの食事摂取基準では1日15μgのビタミンD摂取を推奨している。一方、日本の新しい食事摂取基準は、食品ルートと紫外線ルートを合わせて1日15μg摂取を目指したもの。骨と筋肉の強化のためにも、日光を積極的に浴び、日焼け止めを塗る人は、食品から多めにとってほしい」と田中さん。
ちなみに、ビタミンDが多い食品には、紅鮭(一切れ・100gで33μg)、サンマ(一尾・150gで14.5μg)、シラス(大さじ2杯10gで6.1μg)、天日干しシイタケ(2枚6gで0.8μg)※1などがある。
妊娠中や母乳の赤ちゃんにはサプリを上手に活用を
妊娠中や授乳中の女性のビタミンD不足は、赤ちゃんの骨にも影響する。
「行き過ぎたUVカットの広がりで、日本でも乳幼児のくる病が増加している。女性は妊娠中にD不足に注意し、特に母乳育児の赤ちゃんにはDをサプリで補充することが重要」。
そう指摘するのは、順天堂大学医学部附属練馬病院整形外科・スポーツ診療科准教授の坂本優子さんだ。
妊娠中にDが不足すると、赤ちゃんの頭の骨を指で押したときにへこむ「頭蓋(ずがい)ろう」になるリスクが増え、骨密度も低下する。近年、妊婦や産婦のD不足の深刻さが指摘されており、その状態で母乳育児をすると、赤ちゃんがD不足に陥り、くる病を発症しやすくなるのだ。
赤ちゃんのビタミンD不足は世界的な問題で、米国小児内分泌学会など11の団体が共同で14年に作成した国際指針では、生後12カ月までの乳児には、母乳か粉ミルクかにかかわらず、サプリメントで1日10μgのDの補充を推奨。また妊婦には、15μgのDをサプリでとることを薦めている。
ただし、過剰になれば逆に骨がもろくなり腎臓結石の原因となる高カルシウム血症になる恐れもあるため、厚生労働省は健康被害の出ない上限量を1日100μgに設定している。
「皮膚で生成されたDでは過剰は起きない。またDの生成力は加齢とともに落ちる。上限量を超えなければ心配ないので、サプリも活用して家族全員でD不足を防いでほしい」(田中さん)。
紫外線の増える季節、日焼け止めはほどほどに、意識して魚を食べてほしい。
全国11カ所の観測地で、ビタミンD10μgを合成するのに必要な「お勧めする日光照射時間」と、それ以上浴びると皮膚が赤くなってシミの原因になる「紅斑紫外線照射時間」の速報値を、天気に合わせてほぼリアルタイムで表示する。例えば、顔と手だけ露出した場合、つくばでは、7月の正午なら6分間、12月の正午で41分程度が目安ということがわかる。
※2 http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/mobile/index.html
取材・文/福島安紀 イラスト/もり谷ゆみ デザイン/ディッシュ 構成/黒住紗織(日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト)
順天堂大学附属 練馬病院整形外科
神戸学院大学 栄養学部