ビタミンDは骨への健康効果が有名だが、最新研究で筋力、免疫、妊娠などへの作用も明らかに。2回に分け、取る量なども解説する。
この記事は、「日経ヘルス」に2020年2月号に掲載された記事を転載したものです。

重要なのに、ほぼ全員で不足! 注目の栄養素ビタミンD(上) ←今回はココ
摂りにくい栄養素の代表 ビタミンDサプリも活用を(下)

紫外線を浴びると皮膚で生成できる特殊なビタミン

 普通のビタミンと違い、ビタミンDを得るには2つのルートがある。鮭や青魚、天日干しキノコなどの“食品ルート”と、日光浴で皮膚のコレステロール(7-デヒドロコレステロール)が分解されて生成される“紫外線ルート”だ(下図)。

 一般的に、ビタミンは体の中で生成できない。しかし、Dは紫外線を浴びれば皮膚で生成できる特殊なビタミンだ。

 「ビタミンDの最も基本的な作用は、腸管からのカルシウム吸収を促進し、骨や歯を強くすること。カルシウムを一生懸命とっていてもDが不足すると、骨粗しょう症が進んで骨折リスクが高まる」。こう説明するのは、神戸学院大学栄養学部教授の田中清さんだ。

 よく知られる骨への効用に加え、ビタミンDは近年、世界中で研究が進み、免疫力を高めインフルエンザやがん、糖尿病のリスクを下げるほか、不足すると不妊やうつ病になりやすいなどの新事実が判明しており、注目されている。

 新しくわかった作用の一つが、「筋力の維持と増強」だ。

 「筋肉には、ビタミンDの受容体(レセプター)があり、Dが筋肉のたんぱく質合成を促進する。Dが不足すると、筋トレをしてもたんぱく質が取り込まれず、筋力がつきにくい。そのため、特に高齢者はD不足で転倒リスクが高まる。Dは骨と筋肉の両面からフレイルに関わっている」(田中さん)。

Dが欠乏すると筋力が低下し転倒リスクが増加
Dが欠乏すると筋力が低下し転倒リスクが増加
75歳以上の女性1393人を1年間追跡調査。ビタミンD欠乏(血中ビタミンD濃度20ng/ml未満)の人は筋力が低下し、転倒リスクが25ng/ml以上の人の1.4倍だった
(データ:Osteoporos Int.;26,2185-2192,2015)

 Dの受容体は全身の臓器に存在することがわかってきていることから「D不足を防止すれば、全身の多様な病気の予防につながる」と田中さんは話す。