骨を強くする栄養素として知られるビタミンD。近年、世界で新たな働きは明らかになってきており、前回伝えた「筋肉維持と増強」の働きのほかにも、がんや感染症、糖尿病などの予防に役立つことがわかってきた。妊活にも欠かせない栄養素だ。
この記事は、「日経ヘルス」に2020年6月号に掲載された記事を転載したものです。

重要なのに、ほぼ全員で不足! 注目の栄養素ビタミンD(上)
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ビタミンDが病気の予防になる可能性

 感染症、糖尿病、がん、心臓病、うつ、認知症……。骨の発育や筋力増強を促すことで知られるビタミンDが、病気予防にも働くことが最新の研究でわかってきた。特に注目は、2人に1人がかかる、がんの発症リスクを減らす作用だ。

 日本人男女約3万4000人を対象にした研究では、血液中のビタミンD濃度(25水酸化ビタミンD濃度)が高い人は、最も欠乏している人に比べて、がんのリスクが約20%低かった(下グラフ)。

ビタミンDはがんのリスクを低減させる
ビタミンDはがんのリスクを低減させる
40~69歳の日本人約3万4000人を16~19年追跡調査した結果。血中ビタミンD濃度が最も低い欠乏群(41.2nmol/L(16.5ng/ml)以下)に比べて、43.9nmol/L(約18ng/ml)以上の群はがんの罹患率が約20%低かった。
(データ:国立がん研究センター・多目的コホート研究より。BMJ;360: k671, 2018)

 「ビタミンDが足りているとがんのリスクが下がるメカニズムは、はっきりとは解明されていない。ビタミンDが充足すると、免疫システムが調整され、がん細胞を排除する方向へ働く可能性がある」と東京慈恵会医科大学附属柏病院院長の秋葉直志さんは話す。

 秋葉さんらの研究では、Dが欠乏していた早期の肺腺がん患者が、手術後1年間Dサプリ1日30μgを摂取した群の5年生存率は91%で、非摂取群(48%)より明らかに高かった。