サプリでのD補充がインフルエンザを予防

 さらに注目すべきは、インフルエンザなど急性呼吸器感染症への感染リスクを減らす効果もあることだ。日本の小中学生を対象にした研究では、Dサプリを1日30μg摂取した群のインフルエンザ発症率が、非摂取群の約半分だった(下グラフ)。

ビタミンDは感染症の罹患リスクを下げる
ビタミンDは感染症の罹患リスクを下げる
小中学生334人を2群に分け、ビタミンDサプリ摂取群(1日30μgを4カ月間)と非摂取群のインフルエンザ発症率を比較。サプリ摂取群の発症率は10.8%(167人中18人)で、非摂取群の半分近かった。
(データ:Am J Clin Nutr. 91,5,1255-60, 2010)

 「新型コロナウイルスへの効果は不明だが、ビタミンDの働きで、細胞の中に入り込んだ病原体などを排除するオートファジーという仕組みが誘導される。Dが糖尿病や認知症、心臓病などを予防するという研究結果も出てきているので、血中ビタミンD濃度を高めておくことに越したことはない」と秋葉さん。

 血中ビタミンD濃度を高める方法は、鮭や青魚などの魚介類、天日干しキノコなどの“食品ルート”と、紫外線に当たって皮膚で生成する“紫外線ルート”がある。ビタミンDは肝臓と腎臓で代謝されて活性型ビタミンDになり、骨、筋肉、免疫細胞などに作用する。

 「日本人の食事摂取基準2020年版」では、15歳以上の女性のDの1日摂取目安量は8.5μg。紅鮭(100gで33μg)、サバ水煮缶(同11μg)などが代表的な供給源だ。

 「食事摂取基準は紫外線ルートでビタミンDが合成されることを前提にしているが、過度なUVカットで女性のD不足が加速している」と指摘するのは、杉山産婦人科新宿・難治性不妊診療部長の黒田恵司さんだ。

 10代後半~40代の日本人女性(非妊婦)の血中ビタミンD濃度を調べた過去50年の文献を分析した研究では、22グループ中10グループの血中D濃度の平均は、「D欠乏」の基準である20ng/ml未満。残り12のうち11グループの平均は20~30ng/ml未満で「D不足」だった。

 「ビタミンDは受精卵の着床と妊娠の維持にも重要な役割を果たすことが国内外の研究でわかってきた」(黒田さん)。

ビタミンDが充足していると妊娠率が上がる
ビタミンDが充足していると妊娠率が上がる
提供卵子による体外受精を受けた99人の女性を対象にした米国の研究結果。ビタミンD 充足群(血中ビタミンD濃度30ng/ml以上)の妊娠率は78%、出産率は59%で、欠乏群(同20ng/ml未満)より明らかに高かった。
(データ:Fertil Steril. ;101,2,447-52,2014)
※ 日本食品標準成分表2015年版(7訂)