やせているか標準体重なのに、「もっとやせたい」とダイエットを繰り返していない? 食事量が足りなくて起きる低栄養やエネルギー不足は、疲れやすさなど不調の原因になり、将来の健康にも悪影響を及ぼす。
この記事は、「日経ヘルス」に2020年8月号に掲載された記事を転載したものです。

仕事や子育てが忙しいせいだと思っていた不調は、エネルギー不足によって起こっている可能性も。低栄養状態だと感染症にもかかりやすいので要注意。
仕事や子育てが忙しいせいだと思っていた不調は、エネルギー不足によって起こっている可能性も。低栄養状態だと感染症にもかかりやすいので要注意。

20~30代の5人に1人が現代版の栄養失調

 多くの先進国では肥満が課題だが、日本では肥満より20~30代の女性のやせ過ぎが問題だ。最新の調査(※1)では、20代女性の19.8%、30代女性の19.3%、つまり5人に1人がBMI18.5未満のやせ。

 BMIは、体重(kg)を身長(m)×身長(m)で割った体型指数のこと。全世代を合わせても日本人女性のやせは11.2%で、先進国の中で特に高い。

 「日本人女性約19万人を平均12.5年追跡した調査結果から、BMI19未満の人は感染症などになりやすいこともあり、BMI30以上よりも死亡率が高い(下グラフ)。最も死亡率が低く健康が保てるBMI(※2)は、男女共18~49歳では18.5~24.9、50~64歳では20~24.9、65歳以上は22.5~27.4で太めのほうがいいくらい」と女子栄養大学栄養学部教授の田中茂穂さんは強調する。

やせ過ぎの女性は死亡率が高い
やせ過ぎの女性は死亡率が高い
日本人女性約19万人を平均12.5年追跡調査した7つのコホート研究の総合解析。BMI23~24.9を基準に、主要死因別の死亡率を比較。BMI19未満の女性は心疾患による死亡率が1.5倍、肺炎などを含むその他の死亡率が2倍以上高い。
データ:「日本人の食事摂取基準(2020年版)報告書」

 だが、ある女子大生の調査では、BMI18.5未満の人も含め、9割以上が「今よりやせたい」と考え、7割以上の人にダイエット経験があった。ゆがんだボディイメージが、まん延している。

 そのせいか、20~40代の女性の一部はエネルギー不足に陥っている可能性が高い。「身体活動が普通」の女性の推定エネルギー必要量は20~40代で1日当たり2000~2050kcalだが、2018年の平均摂取エネルギーは20代で1643kcal。食事調査のエネルギー摂取量は過小評価される傾向があるが、この数値は終戦直後よりも少ない状況だ。

20代女性は摂取カロリーが少なく、増加するやせが社会問題に
20代女性は摂取カロリーが少なく、増加するやせが社会問題に
20代女性の1日当たりの摂取エネルギーは、終戦後すぐの1950年(2098kcal・全国平均)よりも少なく、栄養不足。20代女性のやせが社会問題化し、国は15%以下へ減らす目標を立てているが、未だに約20%がBMI18.5未満。
データ:「国民健康・栄養調査」(平成29年)