ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の発育を促す栄養素。近年は認知症、がんなどのリスクを減らすといった研究報告もあり、脚光を浴びているが、さらに、妊娠における受精卵の子宮内への着床やその後の妊娠の維持にも関わっていることも明らかになってきた。一方、若い女性では、ビタミンD不足が非常に多いと指摘されている。そこで、ビタミンD不足と不妊症や妊娠中の合併症の関係と、必要量を充足させる方法について、杉山産婦人科新宿・難治性不妊症診療部長で順天堂大学産婦人科講座非常勤講師の黒田恵司さんに聞いた。

ビタミンD不足だと妊娠率が低く流産率が高い

「ビタミンDは、受精卵の子宮内への着床と妊娠の維持に重要な役割を果たしていることが、国内外の研究で明らかになってきました。血中ビタミンD濃度(25水酸化ビタミンD濃度)が低い女性は、受精卵が着床しにくく、着床したとしても流産しやすくなる可能性があります」。黒田さんは、そう指摘する。

 米国で提供卵子を用いた体外受精を行った99人の女性を対象にした研究※1では、ビタミンDが充足(血中ビタミンD濃度30ng/ml超)していた女性の受精卵の着床率は78%、実際に赤ちゃんを産むまでに至った出産率は59%だったのに対し、ビタミンD欠乏(同20ng/ml未満)の女性の着床率は37%、出産率は31%と明らかに低かった。ビタミンD低値(同20~30ng/ml未満)の女性の着床率は37%、出産率は30%で、ビタミンD欠乏の人たちと変わらなかった。この研究結果を見ると、赤ちゃんを産みたい女性は血中ビタミンD濃度を30ng/ml以上に上げたほうがよさそうだ。

「血中ビタミンD濃度を高める方法には、鮭や青魚、きのこ類などの食品に含まれるビタミンDが腸管から吸収される〝食品ルート″と、肌が紫外線に当たることで、体内で合成される〝紫外線ルート″の2つのルートがあります。しかし近年、1年中、UVカットをする女性が増え、紫外線ルートが遮断されることで、若い女性のビタミンD不足が加速していることが世界的にも問題になっています。過度なUVカットによるビタミンD不足が、不妊症の原因の一つになっている可能性があるのです」

不妊治療中の女性の約9割がビタミンD不足

 そう話す黒田さんらの研究グループが、不妊治療を受けている女性276人の血中ビタミンD濃度を測定したところ、ビタミンDが充足(血中ビタミンD濃度30ng/ml超)している人はわずか12.7%だった。約9割の女性でビタミンDが不足していたのだ。しかも、276人中18人(6.5%)はビタミンDが極度に欠乏(同12ng/ml未満)しており、骨折や免疫異常を起こしかねない状態であった(グラフ)。

不妊症の女性の約9割がビタミンD不足だった。不妊治療を受けている女性276人の血中ビタミンD濃度を測定したところ、ビタミンDが充足(血中ビタミンD濃度30ng/ml)している人はわずか12.7%だった。(データ:Nutrients. 2018 Jul 13;10(7).)

 10代後半から40代の日本人女性(非妊婦)の血中ビタミンD濃度の分布をみた複数の文献を検索してまとめた獨協医科大学の研究※2によると、1963~2015年までに公表された13件22グループのうち、10グループの血中ビタミンD濃度の平均は20ng/ml未満、21グループの平均は20ng~30ng/mlだった。不妊治療を受けている人に限らず、10代から40代の日本人女性の多くが、ビタミンD不足に陥っている可能性がある。