免疫バランスの乱れが流産の一因?!

 ではなぜ、ビタミンDが不足すると、着床率や出産率、つまり妊娠維持率が下がってしまうのか。黒田さんは「私たちの体を守る役割を果たす“ヘルパーT細胞”という免疫細胞が関わっている」とし、次のように説明する。

「ヘルパーT細胞には主に2タイプあります。Th1細胞は、主に細菌やウイルスなど細胞の中で増殖する病原体や異物を排除する働きをします。もう一つのTh2細胞はダニやカビなどのアレルゲンに反応する細胞で、胎児を拒絶しない免疫寛容に関わります。お母さんの体にとって胎児は半分お父さん由来のため異物ですが、妊娠が成立するためには胎児を排除せずに受け入れる必要があります。Th1細胞とTh2細胞のバランスがうまく取れ、Th2細胞が優位になると妊娠が成立し維持されますが、バランスが崩れてTh2細胞値に対してTh1細胞値が高い状態になると、異物を排除する力が強くなり、着床不全や流産につながるのです。一方、ビタミンDには免疫を調節する働きがあり、血中ビタミンD濃度の高い女性は、Th1細胞とTh2細胞のバランスがよく、妊娠が成立しやすくなることがわかってきました」

 黒田さんらが、ビタミンD不足の女性23人に3カ月間、1日25μgのビタミンDサプリメントを服用してもらった研究※3では、11人の血中ビタミンD濃度が「充足レベル」の30ng/ml超になり、Th1とTh2の比もバランスの良い方向に改善した。

 血中ビタミンD濃度を調べる血液検査は、病気がない場合は自費診療だが、一般的には4000~7000円程度で受けられる。妊活がなかなかうまくいかない女性は、一度、血液検査を受けてみてもよいだろう。

妊活中の女性は日光を浴び、食品から意識してビタミンD摂取を

「妊娠前から血中ビタミンD濃度が30ng/ml以上の人は、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、習慣流産といった妊娠中の合併症を発症するリスクが低い※4ことも明らかになっています。妊娠してからビタミンDを補充しても合併症の発症リスクは下がらないことから、赤ちゃんがほしい、あるいは、妊娠の可能性のある女性は、普段から、ビタミンDが多い食品を意識して食べ、UVカットはほどほどにして日光にも適度に当たって、血中ビタミンD濃度を30ng/ml以上に保つことが重要です。ビタミンDを含む食品は限られているので、食事だけで十分な量を取ることは難しいでしょう。日光からビタミンDを合成することがビタミンDを充足する近道なのですが、紫外線を浴びたくない女性なら、サプリメントでビタミンDを補ったほうがいい」と黒田さんはアドバイスする。

 これまで「日本人の食事摂取基準(2015年)」では、ビタミンDの摂取目安量(18歳以上の男女の場合)は1日5.5μgだった。しかし2020年版から、8.5μg/日に引き上げられる見込みだ。とはいえ、これは紫外線からもビタミンDを十分摂取することを前提にした数字。一方、アメリカ・カナダの食事摂取基準(2011)は、19歳以上の成人に食事とサプリから1日15μgのビタミンD摂取を薦めており、この基準が世界標準になりつつある。

ビタミンDが多い食品の例。紅鮭(一切れ120g)39.6μg、サンマ一尾(150g)14.5μg、シラス(大さじ2杯10g)6.1μg、天日干しシイタケ(2枚6g)0.8μg(日本食品標準成分表 2015年版)

 食事で5μg、紫外線から10μg取ろうとするときに参考になるのが、国立環境研究所地球環境研究センターの「ビタミンD生成・紅斑紫外線情報」サイトのモバイル版だ。このサイトでは、10μgのビタミンDを合成するのに必要な紫外線照射時間が全国12カ所の気候に合わせてリアルタイムで確認できる。

 紫外線照射時間の表示は、長袖長ズボンで顔と手を露出(肌600平方センチ露出)した状態、半袖半ズボン(ミニスカート)で顔と手の甲に加えて両腕、膝から下の部分も露出(肌1200平方センチ露出)した状態の2パターン。「お勧めする日光照射時間」が、10μgのビタミンDを生成するのに必要な時間、その下の表示が、それ以上浴びると皮膚が赤くなる(シミの原因)など有害になる恐れのある紅斑紫外線照射時間だ。紅斑紫外線照射時間を超えて日光浴をしなければ、しみや皮膚がんのリスクが増える心配はないとされる。