ビタミンD不足はサプリで改善する手も

 黒田さんは、血中ビタミンD濃度が20ng/ml以下で不妊治療を受けている女性には、1日50μg、20~30ng/mlなら1日25μgのビタミンDのサプリメントの摂取を薦めている。前述の研究(※3)で、「1日25μgのビタミンDサプリメントを3カ月間摂取しても、約半数の女性は、血中ビタミンD濃度が思うように上がらなかった」からだ。

 厚生労働省の示すビタミンDの耐容上限量は1日100μgで、サプリなどでそれ以上摂取すると、血液中にカルシウムを取り込み過ぎて、高カルシウム血症になるリスクがあるとされる。1日50μgならサプリで補給しても問題なさそうだ。

「血中ビタミンD濃度が高い状態を維持すると、妊娠に伴う免疫状態を改善するだけではなく、卵巣機能の改善にもつながることが解明されてきています。さらに、がんやうつ病、インフルエンザ予防、花粉症症状の改善につながることもわかってきています」(黒田さん)。

 妊活のためだけでなく、若々しく健康を維持するためにも、食品と日光で血中のビタミンDをしっかり高めておきたい。

黒田恵司(くろだ・けいじ)さん
杉山産婦人科新宿・難治性不妊症診療部長、内視鏡診療部長
黒田恵司さん2001年順天堂大学医学部卒業。英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究所で子宮内膜脱落膜化について研究、ウォーリック大学の研究所で原因不明の習慣流産、着床についての研究を行う。順天堂大学産婦人科学講座准教授などを経て、2018年より現職。順天堂大学産婦人科学講座非常勤講師兼任。専門は、不妊症、不育症、内視鏡手術。

取材・文/福島安紀 企画・構成/黒住紗織=日経BP総研(ヘルシー・マザリング・プロジェクト)

※1Fertil Steril. 2014 Feb;101(2):447-52.
※2日本公衆衛生雑誌2017;64(3):133-142.  
※3Nutrients. 2018 Jul 13;10(7).
※4J Clin Invest. 2016 Dec 1;126(12):4702-4715.

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