つい「もう少し、やせたい」と思い、ダイエット情報に目が行ってしまう。これは現代女性に多い行動だ。でも、知らずしらず、それが度を超していたら――。「やせ」にはリスクもあることを知っておこう。2019年度第1回ヘルシー・マザリング・プロジェクト研究会で、慶應義塾大学名誉教授で産婦人科医の吉村泰典さんが、「現代女性のライフサイクルと求められる健康支援~やせと肥満~」をテーマに講演。やせ願望が強く、ダイエットを繰り返す女性が多い現状に警鐘を鳴らした。

思春期のダイエットは将来の骨粗しょう症リスクを増やす

 女性の過度なダイエットによる弊害の一つは、月経への影響だ。

「ダイエットで皮下脂肪が減少すると、女性ホルモンの産生を調節している脳の視床下部や下垂体からのホルモン産出が抑制されます。そうすると、卵巣から、女性ホルモンのエストロゲンが出なくなって、無月経になるリスクが生じます。無月経になると一番問題なのは、骨塩量が減ることです。骨塩量の増加は15~16歳がピークで、20歳以降はほとんど増えません。一番大切な思春期に過度なダイエットによる無月経になると、月経が正常な人に比べて骨塩量が低下し、骨が弱くなるのが大きな問題です」。講演の冒頭、吉村さんは、こう指摘した。

(データ:思春期学 16(3), 319-323, 1998より)

「やせている人の約半分が自分を『普通の体形』だと認識し、『太っている』と思っている人もいるなど、体形の認識障害が起こっており、やせている人がさらにやせたがる悪循環が起こっています。やせ願望をあおるマスコミの責任は大きい。ちょっとしたやせ願望がきっかけとなり、やがて拒食になり、さらに過食へと移行する人もいる。こうなると社会問題です」と吉村さん。

海外では、やせたモデルの登用を規制する国も

 国民健康・栄養調査によると、女性の場合、20代の5人に1人、30代の6人に1人が「やせ」(体格指数のBMI(体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m))が18.5㎏/㎡未満)。2000年以降、やせの割合がほかの先進国に比べて異常に高いまま、ほぼ横ばいで推移している。

 吉村さんは、英国で2000年に、政府、医学会、ファッション業界が共同でボディイメージ・サミットを開き、やせたモデルの登用を規制し、若い世代の誤った痩身への憧れを是正しようとした事例を紹介。「海外では、20年近く前に、若者のボディイメージの訂正に取り組んでいるのに、日本は遅れています」と指摘した。

 ボディイメージ・サミットは、医学会が「拒食症患者の9割が女性であり、その15~20%は20年以内に死亡する」警告したことをきっかけに開催された。英国の保健省がファッション業界に対して不健康にやせたモデルの使用に対する自粛とモデルの体格向上を促す自主規制を要請した。業界は、自主規制機関を設置し、やせ過ぎたモデルの登用を規制している。