男性の妊活で注目の検査項目 精子のDNA損傷率(DFI)とは

 損傷したDNAを持つ精子の割合はDNA断片化指数(DFI:DNA fragmentation index)検査で測定する。DFIが高いほど精子のDNAの損傷率が高く、妊娠が成立しにくい状態になっていることを示す。一般的には、DFIが25%以上だと、自然妊娠しにくいといわれている。獨協医科大学埼玉医療センター・リプロダクションセンターでは、日本人約800人のデータを解析した結果を踏まえて、22%超を妊娠しにくいラインの目安としているという。

 通常の精液検査では、精子量、精子濃度、総精子数、精子の運動率などを調べるが、DFIや精液中の酸化ストレスの強さを測る「精液中酸化還元電位測定(ORP測定)」を実施している医療機関は、獨協医科大学埼玉医療センター・リプロダクションセンターなど国内でもごく少数。「精子濃度や精子の運動率が高くてもDFIが高く、不妊になっている男性もいる。DFIが高ければ、実施すべき治療法も変わってくるので、男性側に問題がありそうなら、DFI検査を受けてみることを薦めたい」と岡田さん。

取材・文:福島安紀/グラフ:志賀是仁/構成:黒住紗織=日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト

岡田弘(おかだ ひろし)さん
獨協医科大学埼玉医療センター病院長
リプロダクションセンターGM(統括責任者)・泌尿器科主任教授
岡田弘1980年神戸大学医学部卒業。85年同大学大学院医学研究科博士課程修了。ニューヨーク医科大学留学、神戸大学医学部泌尿器科助教授、帝京大学泌尿器科助教授などを経て、2007年より獨協医科大学越谷病院(現埼玉医療センター)泌尿器科主任教授。15年に男性不妊と女性不妊を包括的に治療するリプロダクションセンターを創設しセンター長に。18年より獨協医科大学埼玉医療センター病院長兼任。男性不妊治療・研究の第一人者。専門は、男性不妊、尿路性器がん、尿路感染症、排尿機能。著書に、『男を維持する「精子力」』(ブックマン社)などがある。