閉経女性と同じ変化が。肌の老化も進む?!

 骨がスカスカになり、血管が硬くなり、うつ傾向になる――。これは、閉経後に現れる体調の変化と同じ。つまり、無月経の女性の体では、実際の年齢は若くても、閉経した50代以降の女性と同様の老化が静かに進んでいるわけだ。

 「無月経の悪影響は、アスリートも普通の女性も同じ。月経が止まってしまったら、放置しないで婦人科を早めに受診し、早く月経を回復させる対処をしてほしい」と能瀬さん。

 妊娠への影響も忘れてはいけない。無月経の状態は、卵巣機能が休止しているから排卵もない。そうした状態で妊活を始めたとしても、すぐに月経が再開するとは限らない。

月経再開の目安は標準体重の9割以上に戻すこと

 体重減少性無月経の場合、月経を再開させるためにはエネルギー不足を改善し、体重を戻すことが最優先。具体的には、その人の身長における標準体重の9割以上まで体重を戻すように食事や運動習慣を見直す。

 長期間無月経が続いた人では、月経が戻らないケースも指摘されてはいるが、「体重が回復して月経がきちんと再開しさえすれば、排卵が再開するケースがほとんどです。無月経のアスリートで、卵巣予備機能を示すAMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値を調べた私の研究では、卵巣自体の機能は悪くはありませんでした」と能瀬さん。

 ただし、体重が回復し、「少量の出血があってもそれで月経が戻ったと安心するのは禁物」(能瀬さん)。月経量がしっかりあり、基礎体温が低温期と高温期の二相性を示して初めて、正常月経に戻ったといえる。とくに妊娠を考えている場合は、排卵があるかきちんとチェックを。

 キレイと健康を保ち、老化を進ませないために、行き過ぎたやせを見直し、止まった月経は一日も早く回復させたい。

取材・文/茂木奈穂子 イラスト/もり谷ゆみ 図版/平拓哉 企画・構成/黒住紗織(日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト

能瀬さやかさん
東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科
能瀬さやかさん 北里大学卒業。2006年東京大学産婦人科学教室入局後、国立スポーツ科学センターなどを経て、2017年2月より現職。国立大学では日本で初めての「女性アスリート外来」の開設から携わる。一児の母。