定期的だった月経が止まってしまう「無月経」。女性ホルモンが低下するこの体の急変は、想像以上に心身への悪影響がある。
※この記事は、「日経ヘルス」に2019年4月号に掲載された記事を転載したものです。

やせるほど増える無月経 要注意はBMI 18.5未満

 定期的にあった月経が3カ月以上止まってしまった経験をしたことはないだろうか。こうした「無月経」を「生理がないのはらくちん」と安易に考えているとしたら、その人は危険な橋を渡っていることになる。無月経は女性の健康や美容に大きな影響を及ぼすからだ。

 無月経については近年、特に女性アスリートを対象に研究が進められている。そこで、アスリートの研究例から一般女性の無月経の問題点を探ってみる。

 無月経は、妊娠期や授乳期、閉経期など、生理的状態で起こる場合と、病的状態で起こる場合がある。病的な場合の原因の1つが、脳から女性ホルモンの分泌を促す指令が出なくなる「視床下部性無月経」だ。これは極端なダイエットや精神的ストレスなどで、脳の司令塔が機能不全になって起こる。

 アスリートの無月経の原因の多くはこの「視床下部性」だが、ほとんどは運動で使うエネルギー量に対して、食事から取るエネルギー量が圧倒的に足りない「利用可能エネルギー不足」から起こる※1。つまり、膨大な運動量に食事量が追いついていないのだ。

 女性アスリートの無月経に詳しい東京大学医学部附属病院女性診療科・産科の能瀬さやかさんらの調査では、BMI(体格指数)が低い人ほど無月経の頻度が高く(下グラフ)、BMI 18.5未満の人ではそれ以上の人に比べ、有意に無月経の頻度が高かった。

1534人の日本人女性トップアスリート(40種目の選手)を対象にBMIと無月経の頻度を調べたところ、BMIが低い(やせている)人ほど、無月経の頻度が高かった<br>(データ:小児科; 56,1439-1445,2015)
1534人の日本人女性トップアスリート(40種目の選手)を対象にBMIと無月経の頻度を調べたところ、BMIが低い(やせている)人ほど、無月経の頻度が高かった
(データ:小児科; 56,1439-1445,2015)
※1:International Journal of Women’s Health,6,451-467,2014