血糖値が高めの状態は、全身の血管を傷つけ、妊活中の女性や胎児にも影響を与えることをご存じだろうか。早食い、朝食抜きもその誘因になる。
この記事は、「日経ヘルス」に2021年2月号に掲載された記事を転載したものです。

血糖値が高めだと全身の血管が傷つく

 糖尿病は、すい臓で分泌されるインスリンと呼ばれるホルモンの働きが悪くなって、血糖値が高い状態が続く病気だ。

 「健康診断で血糖値が高めといわれても、自覚症状がないので放置しがち。しかし、血糖値が高めの耐糖能異常と呼ばれるような糖尿病予備軍でも、その状態が続くと全身の血管が傷つき、心臓病や脳卒中、認知症(グラフ下)やがんなどになるリスクが高まる」と国立成育医療研究センター母性内科診療部長の荒田尚子さんは、指摘する。

耐糖能異常は認知症のリスクを上げる
耐糖能異常は認知症のリスクを上げる
福岡県久山町の65歳以上住民826人を1985年から15年間追跡調査した結果。耐糖能異常のある人は異常がない人に比べて認知機能が低下しやすく、アルツハイマー病を発症するリスクが4.6倍、脳梗塞や脳出血が原因で起こる脳血管性認知症の発症リスクも4.2倍高かった。
(データ:老年期認知症研究会誌;1,18,20-24,2011)

 女性ホルモンのおかげで閉経前の女性は血糖値が上がりにくく、生活習慣病である2型糖尿病を20~40代で発症する女性は少ないが、年齢が上がるほど、その前段階の耐糖能異常になる人は増えてくる。

 「1~2カ月の血糖の平均を表すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が5.6%以上の人は、血糖値が高めでインスリンの働きが悪くなり始めている可能性がある。血糖値が高めだと、妊娠時に妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群の発症率が増えることもわかってきた。妊活中の人は妊娠前に血糖値をチェックし、数値が高めならコントロールしておくことが大切」と話すのは、産科婦人科舘出張佐藤病院院長の佐藤雄一さんだ。

血糖値が高めだと、妊娠糖尿病を発症しやすい
血糖値が高めだと、妊娠糖尿病を発症しやすい
不妊治療後分娩まで追跡できた443人の女性を血糖値正常高値群(HbA1c5.6%以上)と正常群(同5.6%未満)に分けて妊娠糖尿病の発症率を比較。正常高値群は、明らかに妊娠糖尿病の発症リスクが高く(グラフ)、高齢出産の人ほど正常高値の人が多かった。
(データ:佐藤雄一さん、第35回日本糖尿病・妊娠学会年次学術集会(2019年)発表)