サプリは吸収率高い 流産、自閉症の予防も

 葉酸を多く含む食品には、ホウレン草などの色の濃い葉物野菜、ブロッコリー、いちご、枝豆、納豆、のり、レバーなどがある(上のイラストも参照)。

 では葉酸はどのくらいの量をとればいいのか。「日本人の食食事摂取基準(2015年)」では、18歳以上の女性の葉酸摂取推奨量は240μg。厚生労働省は妊娠を計画している人には、さらに、サプリで400μgの上乗せを薦めている。

 上乗せ分をサプリでとることが推奨されるのには理由がある。「葉酸は“活性葉酸”の形になって初めて働く。食品からとる天然型の葉酸は、調理や消化の過程で吸収される活性葉酸の量が半分程度に減るが、サプリの葉酸は最初から“活性葉酸”の形なので、約85%が吸収され、利用効率が高い。中国人153万人を対象にした研究※3では、妊娠3カ月前からの葉酸サプリで、流産率、低出生体重児出生率、新生児死亡率が下がることもわかっている」と太田さん。

 また、中国のチームが16の研究を統合解析したところ、妊娠前の400μgの葉酸サプリか、葉酸を含む総合ビタミン剤の摂取で自閉症の発生率が半減していた※4

※3 Lancet:388,91,591,2016
※4 JAMA.;309,6,570-7.2013

妊活、妊娠中女性だけでなくみんながとりたい

 妊娠との関わりが知られる葉酸だが、実は老若男女、誰もが意識してとりたい栄養素だ。葉酸は、ビタミンB12と一緒に赤血球を作る造血機能も担う。

 また葉酸が不足すると、たんぱく質を体の中に取り込む途中で発生する「ホモシステイン」という悪玉物質が血中に増え、血流が滞り、動脈硬化が進行。血管の老化が進んでしまう。

 「血液中にホモシステインが増えると、血栓ができ、妊娠中なら不育症、高血圧腎症、普段でも心臓病などの原因になることがある。血中ホモシステイン濃度が高いと、認知症になりやすいこともわかっている。こうした病気の予防のために、妊娠中期・後期も、さらに男女を問わず普段から意識して葉酸をとることを薦めたい」(太田さん)。

 また、「うつ病の4人に1人は血液中の葉酸濃度が低い」との報告があり、葉酸をしっかりとることは、うつ病の予防や改善にもつながる可能性がある。

 このように、みんなが積極的にとりたい葉酸だが、近年わかってきた新事実を知っておきたい。それは、日本人は葉酸を活性葉酸に変換する酵素の働きが弱く、葉酸を吸収しにくい体質の人が多いというもの。