日本人では、葉酸の吸収率が低い体質の人が7割も

 両親から1本ずつ受け継ぐ遺伝子のうち、MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子の片方に変異のある人は、まったく変異のない人の65%、両方変異のある人は30%に活性葉酸の吸収率が下がるのだ。これは、食品から葉酸を400μgとった場合、調理や消化の過程で半分になり、さらに片方に変異がある人は130μg、両方変異がある人は60μgしか活用できないということ。そして、日本人でまったく遺伝子変異がないのは12.8%のみなのだ(下の表)。

日本人には葉酸を吸収しにくい体質の人が多い
日本人には葉酸を吸収しにくい体質の人が多い
MTHFR遺伝子の片方に変異があると、葉酸の吸収率は35%低下し、両方に変異があると70%低下。神経管閉鎖障害の発生リスクも上がる。
(データ:酵素活性率/ Nat Genet.;10,111-3,1995、日本人の発生割合/ Biochem Biophys Res Commun.;16,268,370-2,2000、神経管閉鎖障害リスク/ Am J Epidemiol.;1,151,862-77,2000をもとに、太田さんが作成)

 「約7割の日本人が葉酸を吸収しにくい体質であることを考えると、普段から葉酸を含む食品は意識的に多めにとるのでもいいと思う。食品だけで十分に摂取できない人は、妊娠中以外もサプリの活用を検討してみて」と太田さんは話す。

 ただ、厚生労働省は「サプリでの葉酸摂取の上限を20代と70代以上で900μg、30~60代で1000μg」とする。サプリでとる場合はこの範囲内の量にとどめたい。

取材・文/福島安紀 イラスト/もり谷ゆみ デザイン/ディッシュ 企画・構成/黒住紗織(日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト

太田邦明さん
福島県立医科大学 医学部産科・婦人科学 講座講師
太田邦明さん 東邦大学大学院修了。ロザリンドフランクリン医科大学産婦人科助教、慶應義塾大学産婦人科学教室助教などを経て、2018年より現職。専門は生殖医学、女性医学。