「たんぱく質」は炭水化物、脂質とともに、体に不可欠な三大栄養素の一つ。「まとめて夕食にとっていればいい」わけではなく、毎食、特に朝食にしっかりとったほうがいいことがわかってきた。
※この記事は、「日経ヘルス」に2019年8月号に掲載された記事を転載したものです。

足りないと貧血、髪や肌のトラブルの原因に

 細胞、筋肉、内臓、血管、皮膚、髪、爪、ホルモン、酵素など私たちの体の重要な部分は、たんぱく質から作られている。たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成され、そのうちの9種類は、体内では合成できず食物から補わなければならない必須アミノ酸だ。

 「たんぱく質が不足すると、貧血になったり肌や髪、爪のトラブルが増えたり、脳内ホルモンのセロトニンが減ってうつや睡眠障害、認知症になるリスクが高まるなど、さまざまな不調が生じます。ところが、国民健康・栄養調査を見ると、日本人女性のたんぱく質の平均摂取量はこの20年で激減して戦後の食糧難時代と同レベル。実際に不足気味の人が増えています」。

 女性や子どもの栄養・食事療法にも力を入れる赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子さんは、そう指摘する。

 妊活中、妊娠中の女性がたんぱく質不足だと、赤ちゃんが低栄養状態になり、低出生体重児の出産や先天性障害のリスクも高まる。たんぱく質は、ウイルスや細菌から守る抗体、女性の生殖機能に欠かせない性ホルモンなどのもとにもなる。

 「疲れやすい、傷が治りにくい、卵巣機能の低下、冷え性などの不調もたんぱく質不足が原因である可能性があります」と伊藤さん。

 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、18歳以上の女性に1日50gのたんぱく質摂取を推奨する。ただし、「推奨量」はあくまで、「欠乏して病気にならない最低限の目安」だ。

 「近年、高齢者だけでなく、若い女性でも問題なのが、要介護につながりやすいサルコペニア(筋肉減少症)とその予備軍の増加。サルコペニアにならないだけの筋肉量を維持し、心身の健康を保つには、20~50代の女性で1食20~25g、1日合計60~75gのたんぱく質摂取を目指すべきというのが、多くの専門家の共通意見になってきました」と伊藤さんは強調する。