とりにくい水溶性食物繊維 意識して選ぼう

 食物繊維といって想像する野菜や玄米などに含まれるのは、主に不溶性食物繊維だ。「水溶性食物繊維は限られた食材にしか含まれないから、意識してとる必要がある」(井上さん)。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)によると、1日当たりの食物繊維の摂取目標量は18~69歳女性で18g以上だが、現状とれているのは13.0g(※4)で、5gほど足りない状況だ。水溶性食物繊維を多く含む食材(下表)を参考に、食事に足したい。

 井上さんは、自閉症児に水溶性食物繊維を与えて腸内細菌叢を変えることで、イライラ症状が改善することも確認している(下コラム)。世代を問わず、健康を保つために腸活は欠かせない習慣だ。「多様な食物繊維を意識してとることが、腸内細菌にエサを与え、豊かな腸内細菌叢をお腹の中に持つことにつながる。また乳酸菌、ビフィズス菌などの有用菌は、腸内を通過しながら腸の免疫システムを高めるので、こちらも併せてとるといい」(井上さん)。

※1 Science; 351,1296-1302, 2016
※2 PLoS One; 8(11): e78331. 2013
※3 Sci Transl Med.; 6(237): 237ra 65. 2014
※4 平成29年国民健康栄養調査より。40~49歳の女性1人1日当たり平均値

取材・文/柳本操 イラスト/もり谷ゆみ デザイン/ディッシュ 企画・構成/黒住紗織(日経BP総研 ヘルシー・マザリング・プロジェクト

永田智さん
東京女子医科大学 小児科教授・講座主任
永田智さん 順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。英国クイーンエリザベス小児病院研究員、ロンドン大学大学院博士課程などを経て現職。日本小児科学会理事、専門医。
井上亮さん
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 動物機能学研究室講師
井上亮さん 京都府立大学大学院農学研究科博士後期課程修了、農学博士。英国国立ローウェット研究所腸管免疫研究室などを経て現職。腸管機能(免疫)、腸内細菌叢を主な研究テーマとする。